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【読書記録】そして、バトンは渡された/瀬尾まい子

※ネタバレ含みますので、まだ読んでない方や気になる方はお控えください

前回読んだ小説が結構心痛くなって辛かったので、今回は優しめのお話を。

(前回の感想はこちら]


そして、バトンは渡された/瀬尾まい子

あらすじ

幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。血の繋がらない親の間をリレーされながらも出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき―。大絶賛の本屋大賞受賞作。

Amazonより

主人公の優子は、17年間の中で3回苗字が変わり家族形態も7回変わった特殊な家庭環境で暮らしている女の子。

実母は亡くなり、実父は再婚からの離婚。
そして再婚相手の継母との二人暮らし後、継母が再婚し、継父との3人暮らしが始まる。
それも束の間、また継母は離婚し、再婚するのだが、すぐに離婚し、残された3人目の再婚相手の継父との2人暮らしに。

字だけで見るととんでもない環境に見えるし不幸な家庭環境なんだなと憶測してしまう...


だけども、物語に出てくる優子の家族達は全く不幸にみえない。(実父だけ少し可哀想な気もするけど...)


強がりでも見栄を張っているわけでもなく、本人達がこの環境を本当に不幸だと思っていない。
それは優子が、実の親以上に深い愛情を注いでくれる親代わりの人たちに恵まれたからだ。
そして親達も優子の存在のおかげで人生が充足している。


優子が幸運にも、良い親に恵まれたようにも見えますが、優子が捻くれず優しく礼儀正しい子に育ったから愛される存在になったのだと思います。

それは実の親や祖父母の教育あってのもの。継母達だけでなく血の繋がりのある家族にも愛情持って育てられたんだろうな。
実の父には見捨てられたのかなと思いきや、2章でその辺りが明らかになります。切ない。

思いやりが溢れる世界

現実世界だったらこんなことあり得ないんだろうけど、あったらいいなぁ...あってほしいなぁと思う世界。

こんなにもお互いを思いあう世界があるなんて...
優子たち親子の話も良いんですが、前半の優子と優子のことが好きな浜坂くんとのやり取りも良い。

「まあ、よくわかんないけど、そのころころ変わるどの親にも大事にされてたんだろう?」
「まあ、それはそうだけど」
「だから、世渡りがへたでもやってこれたんだよ。たくさん親がいるのも、いいじゃんね」
そして、バトンは渡された p153.154


高校3年生でこんなこと言える男の子がいるのだろうか...
一見しっかり者にみえる優子に、立ち回るの下手と言ったり、嫌味無くたくさん親がいることをいいねと肯定したり。
浜坂くんのキャラ好きだったのですが、後半全く出てこなくて残念でした。。付き合うのかと思ってたのに。。笑

森宮さんと優子ちゃん。梨花さんと優子ちゃん。

物語には4人の親が出てきたが、キーとなるのはやはり森宮さんと梨花さん。

梨花さんはあれだけ優子が好きだったのにどうして家を出てしまったのだろうとモヤモヤしてたのですが、後半にこんなにも優子思いなんだ...ってことが発覚。
優子を思い、その行動力は抜きを出て1番かも。

普通の他人じゃできない。梨花さんの人柄なのか。ここまで思える相手がいるのか、しかも血の繋がりのない娘に。
ちょっと周りを振り回しすぎな気もしますがこれも物語だからオッケー。

森宮さん視点の最終章も好き。
優子にとって大事にしてもらった親達だけど、最後まで親だったのは森宮さんだけ。
優子が結婚してからも帰る場所を用意しているということはこれからも父親を続けるつもりである。

親が変わるということは優子にとって運良く不幸にはならなかったけど少なからず不安はあった。
その中で変わらず居続けてくれる森宮さんの存在はかけがいのないものだったんだろうな。


誰かを思うことや、人との繋がりの大切さを教えてもらえた本でした。
映画もまだ見てないから気になります。

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