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川端康成 「少年」を読んだ記録

※このnoteには川端康成の「少年」のネタバレが含まれます。

表現が美しく、大変な世の中で文学を書いていたという、「雪国」でノーベル賞を受賞した川端康成の「少年」を読みました。

前置き

日記や手紙を抜粋するスタイルで書かれています。

文学の世界、特に昔の文豪の作品だと知識がないと論じてはいけないみたいな雰囲気を感じます。
だが、私は漫画を読んだのと同じ感覚で感想を書きます。「学がない」とか「そんなことも知らないのか」といった部分はご愛嬌ってことで許してほしいところです。
(ゴールデンカムイの読者のどれだけがアイヌ文化を知っているだろうか?事前に知らなくても読んで、語っているだろう?そういうことです。)

と言うわけで、前置きはここまでにして感想を述べます。

感想

読もうと思った経緯

昔の文豪の作品には「匂い系」が多いらしい。川端康成の「少年」はかなり「匂い系」らしい。

という不純な動機です。
ボーイズラブみたいな作品などと言われているから読んだのです。
なんと不純な動機でしょう。
(あと、薄くて読みやすそうだったから)

「少年」はBLなのか?

(読んだ人の解釈としか言えませんが)私はそれをBLとは言いません。確かに、少年どうしの友情は度を超えているように感じました。愛しているとも書いてありました。美少年だからどうのこうのとも書いてありました。
ましてや、男子寮の出来事です。
これだけだと、「どう見てもボーイズラブや!」と、飛びつく特定の層もいるでしょう。

しかし、ボーイズラブとは言いません。
ボーイズラブとは、女性向けに男性どうしの恋愛を取り扱ったもので、商業色が強いイメージを持ちます。この「少年」はそういった商業的な感じを受けませんでした。
純文学であり、「ノンフィクション」で媚びてないのでBL作品と言い切るのは、この作品の本質を覆い隠してしまうような気がします。

この「少年」の本質とは、やはり川端康成の原点です。伊豆の踊り子であったり作品を生み出す前のぽつぽつとした日記や手紙の数々から読み取れる原点となった経験や感性です。ですので、BL作品とはジャンルが違うように感じられます。
ロマンチックな恋愛、友愛として遺したいという意図で書かれていたならばBLだったのかもしれませんが。
まとめると、原点となった出来事が書かれている作品です。そして、それが50年の人生の中で振り返るに値したのだと思います。その後の人生に大きな影響を与えたものなのでしょうか。毒というか薬というか、胸のつっかえというか、そんなものとしてずっとあったものなんだと思います。
形にならずに燻ってきたものを、振り返る形でやっと昇華できた。それが「少年」なのだと私は感じました。

ボーイズラブじゃないけど、満足したか?って?

さて、「匂い系」やらBLっぽいらしいという噂につられた私ですが、この作品に関して満足したかといいますと、とても満足しました!

しかし、悔しいです。
BLじゃないのに、何でそんな噂あるんだよ!BLと一緒にしたらこの作品の本質にたどり着けないじゃないか!商業的な媚びた作品じゃない!
かといってそれに釣られなかったらこの作品に出会えなかったしなぁ……。とBLと表現することで読む人が増える作品なんだと悔しく思いました。

また、そういったレッテルがあることで、ちゃんと読まないとボーイズラブ風の作品みたいな扱いになってしまうのが悔しいと思いました。

売るための煽り文句

読まれるためには、煽り文句が必要で川端康成の原点と書くだけでは川端康成ファン以外読まないし、川端康成ファンはこの作品を知っています。知らない層に売るにはそうせざるを得なかったのかもしれません。

後世に遺していくためには、興味がない人にも読んでもらわないといけない。良い作品だからこそそういった煽り文句で売って読んでもらって良さに気付いてもらう。そういうスタンスなのかもしれません。映画も商業化してつまらなくなったと言われたり、お金儲けに走るときな臭くなって本来の意味を見失ってしまうよう感覚を覚えます。
しかし、商業やビジネスは良いものを遺す上でも役に立つ方法っていうのが何とも負けた気になります。

どうしても「匂いたい人」向け

※これ以降は、どうしても匂いたい人・BLっぽいものを感じたい人向けです。

美しい少年に目がいく

美しい少年が好きなんですね。それはつまりどういうことか、年上のお兄さんが若い少年に焦がれるということです。
しかも、棚に上げてるようにも見えます。
美少年を狙っている他の先輩と、自分は違うのだという描写。
自分に対してしてくる相手の行動。←これが「怪しい」

お互い好き合ってるのでは?

後半では清野少年からの手紙を読むことができます。それまでは、一人語りで一方的に清野少年に思いを抱いていたように見えます。しかし、後半の清野少年の手紙では清野少年の気持ちも垣間見ることができます。←これも「怪しい」

こんな感じで匂えはしました。

最後に一言だけ

こんな楽しみ方をするなんて、冒涜のような気もするのですが、私のように不純でも読むきっかけになったらいいなと思います。
そして次は、ヘルマンヘッセの「車輪の下」を読みたいと思います。

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