初めてシーシャを吸った話
午後10時。
都会の街は、眠ることを知らない。
少し歩けば、いろいろな声が聞こえてくる。
みんな飲んでいるのだろう。
今日は日曜日であるにも関わらず、その賑やかさに少し興奮する。
一軒目は、おしゃれ感を滲ませる大衆居酒屋だったため、2軒目はガールズバーに行くことにした。
谷山くんと赤鼻くんが先導を切り、初めての来店を控える僕は、緊張を紛らわせることで必死だった。
彼らが行きつけのガールズバーに到着すると、赤鼻が颯爽と扉を開ける。
「3人いけますか?」
赤鼻の言葉に合わせて、店の女性が答える。
「2階でもいいですか?」
赤鼻は笑顔で返答する。
「そうなんですか。ならまたの機会で。」
ガールズバーの空気はどんな香りがするのだろうかと、頬に温もりを感じていた僕は、急な展開に驚いた。
赤鼻に話を聞くと、1階にダーツなどのゲームがあり、2階は何もないらしい。
そのため、いつも1階で飲んでいるらしいが、今回はすでに全席埋まっており、やむなく入店しなかった、とのこと。
それなら仕方ないと、僕は緊張で薄くなった呼吸を元に戻す。
しかし、本当の理由は、お目当ての女性がいなかったから断ったらしい。
最もらしい理由をつけて危険を回避した赤鼻の行動に、経験の差を感じる。
「こんなことしたら、この店にはもう行けないな。」
そう笑って言う赤鼻は、輝いていた。
一周まわったくずは美しい。
なんとなくそう思った。
ガールズバーから予定を変更し、今度はシーシャバーに案内される。
普段何を考えていればこの様な場所にたどり着くのか、陰キャの僕には到底理解できない。
店内は電気をつけ忘れたのかと思うほどに暗い。
「暗くすればおしゃれだと思っているのか。」
場の空気に飲まれないように、心の中で悪態をつく。
シーシャにはさまざまな味があり、その中の二つを選んでブレンドしてくれるらしい。
今回はレモン+ミントと、名前は忘れたが甘い香りのものを用意してもらった。
「酔ってる時に思い切り吸うと、ぶっ倒れるぞ。」
そんなことを言いながらシーシャを吸う彼らは、本物のあほだ。
初めてのシーシャに戸惑いながらも、ゆっくり吸ってみる。
コポコポと水中で気泡が生まれる音とともに、煙の様なものが口内を満たし、喉に少しの痛みを感じたところで咳き込んだ。
タバコは吸わないと決めていたため、この様な感覚を味わうことはないだろうと思っていた。
人生は経験だ。
何もせずに嫌いだと決めつけて、文句ばかりを垂れ流す人間がいる。
そんな人たちに、経験は素晴らしい、経験することで本当は好きであったことに気づく場合があると、声を大きくして伝えたい。
「さあ、動け。」
シーシャを経験した僕から皆さんにお伝えします。
" I'm never ever ever smoking shisha. "
小学生時代、テイラー・スウィフトをよく聞いていました。
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