『モンタージュ』編集によって心に訴えかける

『モンタージュ』
 私はその技法をまったく使いこなせていないし、理解してすらいない。
 だけどシナリオのプロであるからにはそうも言っていられないので、いつか必要となる日に備えて、私がシナリオ専門校で習ったことをベースとし、この場に書き記すことで復習することにしよう。

【概要】

「モンタージュ写真」とはひと昔前の警察ドラマによく出てきた、髪型、目、鼻、口、アゴなどのパーツごとに切り分けた写真を組み合わせて、目撃証言者のイメージに近い犯人像を作り上げる合成写真のことをいう。
 翻って、シナリオ用語や映像の世界における『モンタージュ』とは、ロシアの監督・エンゼンシュタインが提唱した『モンタージュ論』のことで、同監督作の『戦艦ポチョムキン』での一場面にて実践されている。その場面とは……
 "戦艦を占拠していた水兵たちの諍いの場と、その巻き添えをくらった乳母車が階段を転げ落ちるカットを交互に挟む(カットバック)"というものだ。
 この表現によって、
『別々のショットをつなげることによって、哲学的な意味を暗示する』
 という効果があるとのこと。
 もっと分かりやすい事例でいうと"無表情の男の顔面のアップと、スープの入った皿をつなげることによって、観客に空腹を感じさせる"こともモンタージュにあたるとのこと。
 そもそもこの技法を『モンタージュ』などと呼んでいるのは日本の映像業界だけなのかもしれない。ハリウッドではこの手法は『エディティング』(編集作業)と呼んでいるようだ。つまりは編集によって観客にある特定の感情を引き起こさせるもの、かつカットバックや場面転換を用いるものを『モンタージュ』と解釈していいのかもしれない。
 ちなみに後述の『無表情の男とスープ皿』の事例は、『クレショフ効果』とも呼ばれており、ソ連の映画監督、レフ・クレショフによる実験から名付けられたということを付け加えておく。

【活用】

・テーマを訴える
 テーマは直接セリフにしたりすると白々しくなる。
 例えば『友情』というテーマで、「友情っていいよね!」なんて登場人物が堂々と口にしたりすると興ざめする。
 なのでテーマというものは直接口にしたりせずに、物語を追ううちに観客の心に伝わることが最良だとされている。
 そのための有効な手段の一つとしてモンタージュが選択されることがある。
 例えばテーマが『格差社会』であるとしたならば……
A:金持ちの男の子が同級生に向かって「貧乏人め!」と罵る。
B:高層マンションに住む子供が嫌いなおかずを残しているのに対して、
  近所のアパートに暮らす子供が一人で留守番をしているときに
  食べるものがなくて、柔らかそうな紙の端をかじっている。

 ……A,Bどちらの方が貧富の差を感じるかというと、Bであろう。
 このようにテーマを間接的に描き、観客の心に届ける手法のひとつ。それがモンタージュである。
 ということは物語の構成上におけるテーマを訴える部分、『転』(クライマックス)の部分で使うことを意識した方が良いのかもしれない。まぁ、『起』でも有効そうだし、効果的であればいつ使ってもいいような気もするが。

【その他の事例】


・映画『アンタッチャブル』
  戦艦ポチョムキンに影響をうけて制作された作品。

・小説『てんのじ村』難波利三:著
  ラストシーンでの石碑と鳩の描写。(文章上でのモンタージュ)

その他、参考サイト
https://www.homemate-research-cinema.com/useful/glossary/cinema/1691301/#:~:text=%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%9F%E3%83%BC%E3%81%98%E3%82%85%E3%82%8A%E3%82%8D%E3%82%93&text=%E3%80%90montage%E3%80%91%E3%81%AF%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%AA%9E%E3%81%A7%E6%96%AD%E7%89%87,%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%82%92%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82

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