『カタルシス』テーマの定着と結末を描き切る重要性

観客は脚本やシナリオに何を求めているのか?
それは「ああ、いい話だったな」という満足感である。
映画やアニメ、ゲームのショートストーリーなどを見終わって、
「えっ、これで終わり?」
「結局この話って何がいいたかったの?」
と思われたらシナリオとして失敗だろう。

観客に何かを伝える際は『テーマ』が重要だ。
そして構成上、テーマを訴えかけるのは起承転結の中で『転』にあたる。
『起・承』は上手くない。観客は感情を動かされたあと余韻に浸りたいものなので、さっと話を終わらせるべきだからだ。
『転』でテーマをさらけ出して、感情に訴えかける。
『結』で余韻に浸ってもらう。
これが物語の構成の基本的なパターンといえる。

では観客の『感情に訴えかける』にはどうすればいいのか?
もっとも分かりやすい概念が《カタルシス》である。

『カタルシス』の定義:
「浄化」という意味。元の意味は「嘔吐」。
感情を吐き出すことでスッキリするという意味合いから演劇用語に取り入れられた。
アリストテレスの『詩学』では以下のように解説されている。
「悲劇が観客の心に恐れと憐みの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」

つまり観客は物語の登場人物に自分を重ね合わせて、自分の代わりに感情を吐き出してもらい、代わりに心のモヤモヤをスッキリさせてもらいたい……という期待をよせて映画やアニメ等のシナリオの介在した作品を鑑賞しているといっても過言ではない。

だから、せっかく時間を割いて作品を鑑賞してもらっているのに、消化不良のまま観客を帰すわけにはいかないのだ。
ゆえにどんなに尺が足りなくても、もっと物語を書きたくても、

【限られた時間の中で観客にカタルシスを感じてもらう必要がある】

ということをゆめゆめ忘れてはならない。
またカタルシスを伴ったテーマの定着には、物語の最後に余韻が必須となるので、

【結末をきちんと描き切る】

ということも必要だ。
端的にいえば、
「いい映画(作品)だったなぁ~」
と印象に残るラストシーンを描こうということだ。

ちなみにこの法則は一部の小説にはあてはまらない。
なぜなら小説は映画やアニメ、ゲームのカットシーンなどとは違い、途中で中断したり、物語を遡って読み返したり出来るからだ。
映画等の時間芸術のように、『限られた時間の中で観客にテーマを伝え、カタルシスを覚えてもらう必要はない』
エンタメに寄せた作風でない限りは、『読み終わった後にテーマについてじっくりと考えてもらう。観客に波紋を投げかける終わり方』でも十分に通用する。

カタルシスについて参考になる作品は
映画『追憶』(1973年)
主演:ロバート・レッドフォード

ラストシーンに街中で鉢合わせになる元夫婦。
深いところでお互いに分かりあっている様子。

と、かつて教えてもらった。
参考までにどうぞ。

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