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ずうっといっしょ!/キタニタツヤ(ディスクレビュー)

思い出を引きちぎるように、棘を含んだ言葉が鋭利なギターリフに続いて溢れてくる。せっかく孤独を演じていたのに、いつのまにかその防壁を破られて消耗線に持ち込まれて、ずるずると過ごした帰ってこない時間。「長調のチューンに感情委託して楽になりたかった」と叫びながら短調のサウンドに尖った言葉を乗せて、ひとつひとつの思い出や感情を投げつけていく。
いつか記憶は消えていくだろうという、期待に満ちた共通見解を「履歴」という言葉を使うことで、消しても消えないものとしてグロテスクに提示する。これからはもう、ずうっと一緒にはいないから、わたしたちが行き合った、生き逢ったという後悔と「ずうっといっしょ!」という痛烈な別れ文句。
身の回りにあるものを手当たり次第投げつけてるかのように、幾重にも重ねられ厚さを増したギターサウンドが感情の起伏の激しさを助長する。時折挟まれる不協和音や一番外側で鳴る記号としてのギター音のおかげか、笑いながら強がって泣いているアンバランスな心の様がこちらにも突きつけられてきて痛々しい。
なのに、「大切なものって、なあに?」という問いには「今失くしたそれ」と正直に答える。そこにいじらしさや、端的な意味での若さが現れる。
「それ」を「これ」と言わない残酷さだって、若さだ。
失くしたものは帰ってこない。それが恋だって、それ以外の人間関係だって、もしかしたら関係性に限らないかもしれない。そんな儚さを、どこまでも加速していくサウンドで投げつけてくる一曲。

後悔
[名](スル)自分のしてしまったことを、あとになって失敗であったとくやむこと。「短い快楽に永い—」「今さら—しても始まらない」

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