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2015.8.30 「おかわり」

 薬を飲み込むのも難しくなった母の食事を何にするか悩む毎日だった。この頃は蒸しパンやお茶漬け、スープなどを食べていた。だんだんと足をおろして座るのも辛くなってきて、寝たまま食べたいと言う。しかし、定番メニューの汁物は寝たままでは自力で食べられない。といって、人に食べさせられるのも嫌そうだった。

 ふと、娘に作った離乳食を思い出して、海苔巻きを作ることにした。ひじき、人参、油揚げを甘辛く煮たものを刻む。汁ごとご飯に加え、柔らかい混ぜご飯を作る。それを、八つ切海苔をさらに3等分したもので巻く。お雛様の御膳のような小さな小さな海苔巻きの出来上がり。

 ベッドを起こして皿をベッドサイドに置くと、自分で取って食べている。台所に「おかわり」と母の言葉が届く。驚いた。あぁ「食べたがるものを食べさせて」って、こういうことだったのだと気づいた。食べたい味、食べたい食材を食べたいペースで食べる。当たり前のことなのに難しい。もっと早く気づきたかった。

その日まで10日。