Kさんのお気に入り服 -ロングコート-
街にクリスマスの飾り付けが始まると、木枯らしの季節がやってきます。慌ててマフラーやロングコートを着込みたくなる、ちょうどそんな日に、Kさんにお会いしました。
Kさんは電動車いすで生活をされ、体に緊張がある(自分で意識していないのに力が入ってしまい、思い通りに動かせなくなる)ので、市販の服をそのままでは着られないことがあります。おしゃれなKさんは、素敵な服に出会ったら、どうやったらそれを着られるか、自分で知恵を絞ったり、知恵を持っている人を探す努力を惜しみません。もちろん、すぐに解決はせず、諦めかけたこともあったし、嫌な思いをしたこともあったそうです。それでも楽しんできたおしゃれのこと、今なら笑って話せるエピソード、リフォームの工夫をたくさん教えてくださいました。
今回はそのなかから、ロングコートのリフォームをご紹介します。Kさんが2枚のコートを見せてくださいました。1枚は上品な茶色のウール、もう1枚は春らしい爽やかな色のリバーシブルのロングコートです。
前からみたら、よくあるロングコートです。とくに変わったことはありません。
後ろを見せていただくと、大胆な工夫がされています。このコートは4面体(半身を前身頃-前脇身頃-後脇身頃-後身頃の4面で立体構成する方法)でできています。その切り替え線を利用して、後身頃を大胆に切り落とし、かつ、深いスリットを入れることで、「座った姿勢でももたつかない」ようになっています。後ろ中心にファスナーをつけることで、さらに「着やすく」なります。
この方法には、縫製をする方も、鋏を入れるのに相当な勇気が必要だったことでしょう。「このくらいの丈にしましょうね」と慎重な打ち合わせをしながらのリフォームだったと伺いました。
見せていただいたコートのポケットには、コートの色にぴったりのふわふわのファーがついた手袋が差し込まれていました。Kさんは、ほんとにおしゃれが好きなんだな、と思いました。
今回、自分以外の人も気軽におしゃれを楽しめるようにと、ご自身が苦労して得た知恵をここで紹介することを快諾してくださいました。そして、素敵だな、着たいな、と思ったとき、「着崩れる」「着るのが大変」そんな心配をせずに、着たいものを着られることの大切さを改めて教えてくださいました。
それがあたりまえの社会になるように....。
Kさんに心から感謝しています。有難うございました。