2015.7.12 「なんで私が。」

 整形外科に入院して2週間後、医師から説明があるとの連絡を受け、母と面談室に向かった。主治医の横には外科の医師がいた。

 彼は、胃カメラの画像を見せながら、スキルス胃がんであること、手術では直せないステージであることを告げた。その鮮やかながんは、ほんの少し残った正常な部分と比較すれば、素人目にも病状が深刻であることを示していた。

 母は「なんで私が。間違いでしょう?」と小さく叫んだ。医師は「そうおっしゃる気持ちはわかりますが、どこにも原因はありません。食事とか生活習慣とか言われますが、原因のほんの一部でしかないのです。」と慰めた。

 この日から外科医が主治医となった。治療法を問う母に、飲み薬と点滴による抗がん剤治療が考えられると告げた。同時に、抗がん剤には副作用があること、母の体力を考慮すると副作用の比較的少ない飲み薬のみ自宅で服用するという方法があると説明された。どうするか決めてほしいと言われ、一旦説明が終了した。