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エッセイ集の公募が始まった




●公募が始まった!

本の公募が始まった。
募集開始して十日ほど経って、既にいくつか届きだしている。
送ってくれてありがとうと名前をなぞっている、ほんとにありがとう... 
誰にも届かなかったらどうしようと震えていたのが杞憂で終わったのもよかった。来年の二月まで募集しています。

集まり出して思うことは、公募の形だと会話ができないな、ということ。
あなたの「言わないでいること」を「偶然出会った気の合う 二度と会わない人」に話すような気持ちで、と要項に書いた。先に依頼で執筆をお願いしている方たちには「旅先のバーで話すような・飛行機で隣になった人と着陸まで話すような」と付け加えている。
ある人は例えにピンとこなかったようで、口頭の説明をした後に「じぶんにとっては旅館のロビーの椅子に座っている時に通りかかった人と世間話や身の上話をする時、がいちばん近いかもしれません」と納得してくれた。真摯な人だった。人それぞれの、身近な人間に喋れないことでも生活に関係のない他人がいい人だったら喋れるというシーンがあるのではないかと思う。
そういう人とそういうことを話す時、きっといきなり打ち明けない。そして打ち明けた後も、そうなんだってやり取りは続いていく。(もしくは「沈黙」もそう。話を聞いた上の選択の一つ。)
公募はそういう「会話」な部分を全部省く。公募は「沈黙」もない。
募集前は重要視していなかったが、胸の中のものを書き出してその後世間に読んでもらうことになる時、一方通行でないことって結構重要なんじゃないか?と感じている。600文字をそのまま冊子に載せることにならないかもしれない。もうすこし印象に残る載せ方がある気がする。
既に送ってくださっている方はご存じだと思うが、返信のメールの後ろに編集者としてではなく「偶然出会った気の合う 二度と会わない人」としての感想・会話をつけている。わたしはカウンセラーではないから、カウンセリングはしない。その時はわたしも飛行機の中にいて、そこで話を聞いた時のことを想像する。隣の席の“他人“に話すように、思ったことを書いている。意味があるかわからないけど、今後も続けていきます。
どうやって見つけてくださったんだ?という方からも送られてきていて、嬉しい限りです。

見つけてくれて、送ってくれて、ほんとうにありがとう。
(この文体、あの頃からどうしても広末節で再生されてしまう。
 わたしは広末のラブレターより何倍も酷く熱い内容の手紙をそれぞれ当時の恋人たちに百枚くらい渡しているから、あの時期のタイムラインは苦痛だった。言える範囲ので「出会ってくれてありがとう」から始まり相手の好きなところを羅列した後、瀬尾まい子『幸福な食卓』の中に出てくるラブレターの引用で「もし別れることになっても結局は一緒になるんだと思います」というようなことを書いたのは覚えている。
 その後めちゃくちゃ別れた。)


●そもそも…

>人それぞれの、身近な人間に喋れないことでも生活に関係のない気の合う他人だったら喋れるというシーンがあるのではないかと思う。

なんてさっき書いたけれど、そもそもそういう前提で取り組んでいる本だけど、そんなことがない人もいると思う。
創作に関係ない友人に公募の要項を見せて意見をもらった時「赤の他人にじぶんの大切な話をしたいと思ったことがない」と言われた。そう言う友人も友人であるわたしには悩みや悲しみも共有してくれる。そういうもんなんだろうなと思う。「なんだこの本は、大切なことは大切な人に話すだろうよ」と思う人はきっといる。
大切なことを身近な人に打ち明けるのは想像がつくし、前提に理解があっても既に音楽とかブログとか詩とか別の方法で表現して不特定多数の人間に届けている人もいる。幸運なことにわたしにも悩みや相談事を聞いてくれる友人たちがいる。
なのにどうして身近じゃない人間を欲しているのか考えてみると、その人の負担になりたくないからというのがでかい。生活に支障を出したくない。けど誰かには話したい。できたらなにか言ってほしい、もしくはなにも言わないでほしい。もしかしたら好きなその人を反応で嫌いになりたくないという弱い心もあるかもしれない。

「言わないでいること」を「言ってほしい・預けてほしい」なんて馬鹿げた話だと思う。「言わないでいる」から「言わないでいる」ことなんだろう。しかも誰かもわからない、気が合うかもわからない、不安定なインターネット上の人に。
鍵でもお金でも「預ける」ということはなんでも「この人なら預けてもいい」と思ってもらえないことには始まらないと思っている。元々かんのや編集の亜沙さんを知ってくれている人や第一二弾を手に取ってくれた人以外にも「預けたい」と思ってもらえるように、どうしたらいいだろうと考える。

アンケートのフォームも作ってみた。

アンケート「言わないでいること」 (google.com)

匿名で送れます。
違う人のフリをして書いているみたいなことがあると悲しいので、一応本人確認用のアカウントやアドレスだけ一緒に。
公募よりもっと気軽なやつです。一言だけでも。悩み事を書き捨ててもいいですし、昔UFOを見たけど信じてもらえなそうだから言ってないとかそういうことでもいいです。

わたしの言わないでいることも冊子に載せることになっていて、絶賛執筆中です。でも、冊子のものとは別でもnoteこまめに更新して内側を載せていけたらいいな。そしたらこの人になら預けていいかもって思ってもらえるんじゃないかな、とか、期待しない方がいいのかもしれないけれど。

言わないでいるけど、読んでほしいです。この気持ちはなんなんだろう。みんなが勇気を出して送ってくれた「言わないでいること」を、丁寧に保管するためにはなにができるだろう。最近はずっとそんな感じ。



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