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都市と水

われわれの生活習慣は、その土地の自然特性に根ざしている。それは都市においてさえ通ずる論理であった。しかし、都市から自然が徐々に失われ、人工的自然で我慢せざるを得なくなってくると、さらには農村でさえ人工的自然が増してくると、どこへ行っても共通に近い生活パターンとなり、地域特有の生活習慣さえ失われて行く。生活の便を求めて都市に集まり、あるいは都市的生活を享受できるようになったが、季節変化に基づく生活、風習の地域特性は急激に失われてきた。一時は近代都市的生活が文化であるかのような錯覚にほとんどの国民が陥ったものである。

しかし、文化とは個性の尊重から始まるものであろう。水の文化を標榜するからには、それぞれの地域の水、河川、運河、水路、池や沼の特性と、それに根ざした生活習慣を尊重することである。無理に成形手術して、近代的(?)にすることは無い。もともと泥の多い沼はそのままがよい。

開発によって変形する必要のある場合も、それによる水循環の変化に対応する手段を、可能な限り、その地域の水の特性を踏まえて用意するようにしたい。環境保全の流行は結構だが、どこでも澄んだきれいな川や沼にすればよいのではない。ましてや、アメニティと称して余りに人工的な水辺設計をされては、自然は迷惑であろう。

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