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社会基盤メインテナンス工学

たとえば、ある人が悪寒を感じ、体温を測定したところ37.0度であったとする。この体温の測定結果が、普通の風邪を意味することもあれば、場合によっては重大な病の予兆を意味する場合もある。ここで重要なのは、体温の変化に対する方策として、風邪が原因で生じた発熱であれば風邪薬を飲むのは適切であるが、重大な疾病が原因で生じた発熱であれば、風邪薬を飲むということは適切ではなく、マネジメントの考え方に基づけば体温の変化を引き起こした原因を明らかにし、その原因に応じた適切な処置を講じることが重要であるという点である。

構造物のメンテナンスについても同様であり、定期点検等でひび割れが発見された場合、その原因を明らかにせず、対症療法的にひび割れ注入や表面被覆等を実施することは、対策とはいえず、むしろ不適切な維持管理によるリスクとすらいえる場合もある。特に、表面被覆のような、施工後のコンクリートの表面状態が観察しにくくなるような状況になった場合には、その後の再劣化が生じた場合の早期発見を妨げかねない。ただし、このことは、表面被覆という工法が、すべからく不適切な維持管理の行為であるということを意味するのではない。重要なことは、不適切な維持管理、すなわち、劣化原因の誤った判定や劣化原因に不相応の対策を実施することはリスクとして捉えられなければならないという点である。

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