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忘却の整理学

ハイブリッド・カーが新しい考え方に立脚した技術であるように、ハイブリッド人間はこれまではっきりとは存在しなかった新しい人間である。そしてその交換の役を果たす忘却は、これによって新しい意義を認められる。

人間は、覚え、覚えて走り、考え、考えて走る新しいライフ・スタイルを確立しなくてはならない。そのときの黒子の立役者は忘却である。こうして忘却は古来の偏見から解放されて、新しい文化創造の動力となる。

忘却は記憶に劣らず、人間の精神活動にとって欠くべからざる作用である。幼少のときにもっとも活発であったのが、文字を知るに及んで、一部が退化し、ときに故障すらおこす。そういう忘却を否定的に考えるようになったことは、人類にとって不幸であった。

人間が、理知ハイブリッドの生き方をするためには、頭の切り換えが必要で、それを行うのが、忘却である。

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