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生物の保護はなぜ必要か―バイオダイバシティ(生物の多様性)という考え方

世界の生物や生態系を守るために、これまでにもいくつもの条約が結ばれている。絶滅のおそれのある種の国際取引を規制するワシントン条約、湿地の生態系を保全するラムサール条約、価値ある自然遺産を保護する世界遺産条約、国境を越えて移動する種を保護するボン条約などである。

しかし、このような条約は、特定の生物種や生態系にスポットをあてて保護することが目的である。地球上のすべての生物と生態系をカバーする条約はなかった。

生物多様性条約は、これまでの条約が対象としている分野を包含し、対象としていなかった部分も含み、地球上のすべての生物の保全のあり方を示す基本的枠組みを示している。

条文には目標や政策のあり方が示されているだけで、細かい義務規定が書かれているわけではない。各国の政府が具体的に何をするかということは、これからつくられる予定の議定書や政府の判断にゆだねられる。

生物資源の利用のあり方について述べられていることも特徴的である。将来の世代の利用の可能性を摘みとってしまわないように、持続的に利用するという「保全」の考えが条約の全体につらぬかれている。

この条約では、生物の多様性の保全は、人類の共通の関心事項であるが、同時に各国の主権のもとで管理されることが確認されている。国家は自国内の生物資源を管理する権利をもつとともに、これを保全する責任と義務も負うのである。




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