見出し画像

自然再生―持続可能な生態系のために

ヒトが組織的に他の集団のメンバーを殺すようになったのも、やはり集団による狩りが行われ、殺戮という行為に慣れてからだろう。一般に哺乳類では、同種の成獣を殺すような行動はごく稀にしか見られず、雌をめぐる競争のなかで、偶然に起こるにすぎないと考えられている。意識的に同種の他の個体を殺すヒトは、非常に特殊な動物であるが、積極的な攻撃性という性質を身につけたことに加え、言語によるコミュニケーションによって組織化された集団行動が可能となったためだろう。さらに武器という「殺すための道具」の発達がそれを容易にする。

こうして征服型の対環境戦略を特徴づける攻撃性と、他の動物には見られない高度なコミュニケーション能力は、自然環境に大きな改変をもたらすいっぼうで、殺戮にもとづく征服という人類特有の集団的行為を可能にした。環境破壊と戦争は、その起源においても、持続可能性を損なうというその帰結においても共通性が大きい。

この記事が参加している募集

推薦図書

新書が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?