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まちづくりと景観

都市は生き物だから、現状を固定し冷凍保存しておくことは不可能だ。もし完全に固定してしまえば、それは死んだ都市であり、博物館か遺跡に過ぎない。生きた生活があるのが都市だ。そうなると古い物が更新され、新しい物が入ることは必然である。あらゆる生物は、新陳代謝によって、変化しながら本質を保つ。外形的に大きな変化があっても、新陳代謝は都市にとっても必然的なことである。

ところが、変化の過程で不適合な不良物が加わると、結果は変わってくる。不良物がそのまま推積すれば、都市は醜く混乱の様相を呈するし、全く異なる存在に変質してしまうかもしれない。都市の遺伝子は、変化を繰り返しながらも、その都市の個性を維持しているべきだが、遺伝子自体が破壊されてしまえば、同じ都市が継続しているとは言えない。

都市は常に変動し、新しい建築物や構造物が建設され、更新されることは必然的である。だが、都市の個性を保ち、周囲の環境との調和を保ちながら継続させることが必要だ。更新とは、時間的連続性のなかで、都市の遺伝子を継承していくものだ。新しい物も、大きな歴史の流れの中にあることを忘れてはならない。そうでなければ、新しい物はただの闖入物として、都市を内部から破壊する癌細胞になる。現在行われている状況はそれに近い。たとえ単体としては優れたものでも、設置させる都市にとって、空間的・時間的になじまないならば、都市景観を醜くさせる不良物になる。

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