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天と地と人の間で―生態学から広がる世界

テクノロジーによって克服できたかのように思われていた自然が、とても手強い、制御しがたいものとして私たちの前に立ち現れ、社会全体の再編成と新たな科学技術の再構築を迫っているともいえる。あらゆる英知を集め、また、科学の総力をあげて未来に対する不安を解消するための体制をつくることが、21世紀を前に最も必要とされていることなのではないだろうか。

いろいろなレベルで絡み合う複雑な環境の問題は、それぞれの専門分野の中だけで問題をとらえ、詳細に分析し、対策を立てるだけでは解決がむずかしい。例えば、農業生産を高めるために導入した外来生物がもたらす生態系ヘの影響のように、目先の個別の問題の解決のためにたてる対策が他のさらに深刻な問題をもたらしてしまうこともある。科学は、ますます細分化され専門化が進んでいるが、環境の問題を解決するには、それとずいぶん異なる方向性と知性が必要なように思われる。

素粒子から宇宙まで、遺伝子から地球まで、さまざまなスケールや階層においてすぐれた業績をあげてきた優れた洞察力をもつ科学者たちが、専門に拘泥せずに、多少の時間を難問解決のための思考に費やすというのはどうだろうか。

いま必要とされているのは、多様な専門家や非専門家の幅広い協働に加えて、広い視野から総合的に問題をとらえ鋭い洞察を加えるための傑出した「頭脳」や、科学的な思考のトレーニングを積んだ意思決定者なのではないかと思うからだ。

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