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金毟り逃亡法

僕は金欠だ。                なぜなら、好きな事に使い、好きな事に貢ぎ、好きな事に熱中症になりそうな程熱中しているからだ。                   

「金貸してくれないか?」やっぱり吉木か。吉木というのは僕の地域では金搾り取り兵器と名をぶちまかしている男だ。            僕は吉木という人間を重要指名手配犯としてひたすら怯えながら監視してい  た。                    「何円借りるつもりだ。」くそっ。借りる余韻に浸らせてしまった。             「額は言えないけど…。」あたかも1銭は貰えると思考回路が成り立っている様な笑顔に「愛らしさ」を覚えた。              「何円だ。きちんと言え。」くそっ。くそっ。優男のオーラがそれらの余韻の内部にのめり込み更に余韻海に浸らせてしまった。       「10億…だけど…」俺と吉木の1メートルの間が開いている空間に冷や冷やとした酸素がのらりくらりと忍び込んだ。             「何に使うつもりだ。競馬、パチンコだったら絶対にあげな…」               形容詞で終わろうとしていた途端に吉木が会話にのめり込んできた。            「愛人の家を建てたいんだ。10億を使って誰もが羨ましがる様な家を建てたいんだ。」眉毛と眉毛の間に皺を4本切り刻みながら必死に熱弁している。                   「愛人!?」                小学校4年生の二分の一成人式以来の大声を撒き散らした。                「そうだ愛人だ。」             顎を引きながら眉毛と眉毛の間に皺を1本切り刻みながら柔らかく熱弁した。         

俺はここで思いついた。吉木は今愛人の事で頭がいっぱいだ。感情が狂ってやがる。火力が上がってやがる。つまり、普段とは異なってやがる。                   「よし。これは逃げれるだろう。」      公共の場で初めて固く握りしめた拳をホカホカに湿った掌に付着させた。          「今度また愛人の話聞かせてよ。」      これは上手い。タイミング。雰囲気。空気。ムード。全てが評定5だ。 しかし、吉木は白山大付属〜白山大学という日本トップクラスの頭脳を所持している。る。                   「中々愛人の話気に入ったね。じゃあまた今度進展があったら報告するね。」        お!。「じゃあまたねぇ〜。」        眼球同士でお別れの挨拶を示した。      

吉木が眼球から消去されたと確信した途端  「吉木アホけ〜〜!金要るか!吉木〜〜」   二分の一成人式の劇以来の感情の昂りをバラ撒き散らした。                 

そして、推しメンの個握券に所持金全てを貢いた。



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