ホームスクーリングの希望を小学校へ伝えに行ったら、意外とあっさり理解を得られた話(2020年7月・横浜市)
神奈川県横浜市の小学校に、ホームスクーリングの希望を伝えてきました。
案外、スムーズに理解を得られましたので、どのような準備をしたか、何を伝えたか、また実際に伝えてみてわかったことを記録しておきます。
ホームスクーリングを検討している方の参考になれば幸いです。
ホームスクーリングを希望した理由「小学校よりも子どもが伸びる確信があった」
まず、よりかね家がホームスクーリングを希望した理由ですが、ひとことで言うと、自宅学習のほうが、小学校よりも、子どもが伸びる確信があったからです。
才能が100あるとして、このまま学校教育に通い続けていたら、70か80にしか伸びない。このように考える理由は、以下記事に詳しく書きました。
また、学校教育における、日本社会の実態に合わないケースの多い社会性・協調性の教育にも、違和感がありました。
ホームスクーリングを考えるようになってから、インターネットで情報収集をしたり、関連コミュニティに顔を出したりするようにしてきました。実感としては、やはり「学校という環境が合わない」ケースが圧倒的に多いようです。
よりかね家では、子どもが小学校に行けないということはなく(朝、眠くてグダグダするようなことはありますが、まあそれは誰だってそう)、その意味では少数派です。
ただ私は、学校に行かないネガティブな理由があるかどうかは、あまり考える意味はないと思っています。
なぜなら、客観的に見て、学校教育が有利なのは、費用が安く済み、数百人規模の集団を経験しやすい以外にありません(これは小学校側が認めていました)。つまり、すべては経済力や時間の融通といった親側の事情です。
もちろん、子どもの個性や性質にも左右されますが、メリットがまったくないというケースも当然あります。「その子のために何が最適か?」を考えて、学校に行かない選択をするのは、極めて論理的な判断であり、何もおかしいことではないと思います。
むしろこれからの時代、攻めの選択として、学校外により質の高い学びの場を求める方向は、加速するはずです。
面談のアポイントメント - 口頭がベターだが連絡帳でも
担任の先生に、ホームスクーリングを検討しているので面談をお願いしたい旨を、まず連絡帳で伝え、アポイントメントを取りました。
連絡帳を使ったのは、新型コロナウイルスの影響で個人面談が当面なかったという事情もありました。
本来なら、口頭で申し入れたほうがいいかもな、と思います。なぜなら「いったいどうしたのだろう」と、担任の先生をかなり心配させてしまうためです。
連絡帳でやり取りをする場合は、あまり多くを書かないほうがいいでしょう。学校側にとってもデリケートな話題ですので、内容によっては大げさに捉えられ、その時点で大事件にされてしまうかもしれません。
ホームスクーリングをうまくやるのに最も大切なのは、学校側との相互理解です。何を伝えるか以上に、コミュニケーションが重要。連絡帳で1から100まで主張するメリットはなにもありません。
私は「学習効率の観点からホームスクーリングを考えています。一度、お話する機会をいただけないでしょうか」とだけ書きました。
学校側へ伝える内容の整理 - できれば書面を用意する
面談の日時が決まったら、次は、伝える内容の整理です。学校側が求める(だろう)情報をきちんと伝えられれば、スムーズに進められますし、面談の回数も少なくできる可能性が高くなります。
できれば、Wordなどで文書にして、プリントアウトして持参するとよいでしょう。ほぼ確実に、学校内の関係各所や、最終的な責任者である校長先生にも回覧されるはずで、効率よく理解してもらうことができます。
では、なにを伝えればいいか。ホームスクーリングは、事実上、認められています。ですので、ここで必要なのは、学校側を「説得する」というより「安心させる」ことです。
親がきちんと調べていて、子どもにとってよりよい選択になっているかどうか。子どもの意志があるかどうか。
1. ホームスクーリングを選択する理由
「学校よりも、ホームスクーリングが優れている理由」を、可能な限り論理的に、自信を持って説明できるようにします。
印象論に終始したり、親も迷っているようだ……と受け取られると、学校側も「わかりました」と言いにくくなってしまいます。
もちろん、(親の都合ではなく)子どもにとっていかに最適か、という視点は、伝わるようにしましょう。
うまくまとめられないな、と感じたら「物語として語る」を意識してみてください。誰しも、ここに至るまでのストーリーがあると思います。
私の場合、小学校入学前からオルタナティブスクールを検討していた昔話から入り(思いつきではなく、きちんと調べ、考えているという印象に繋がる)、コロナ休校で実際に自宅学習をしてみたら手応えが想像以上だった、具体的にこんな成長があった、という流れで伝えました。
2. 学習計画
ホームスクーリングに移行したら、どのような学習をしていくのか、可能な限り具体的に伝えます。
「これから考えます」では、学校側は心配する可能性が高いです。
ここも、中身がどうというよりも、親がきちんと考えているか、が見られていると思っておけばいいでしょう。
国語・算数・理科・社会の基本教科については、学習指導要領からの遅れを心配されました。塾やオンライン教材を活用する方法もありますし、逆に受験を考えないのであれば、得意なところを伸ばすのを優先し、気にしない、という選択もあります。
運動、課外活動、集団での社会性の教育まで含められるとなおいいでしょう。実際に書面で提出した内容を、以下記事に転載しましたので、よろしければご覧ください。
面談の様子 - 緊張感はあるものの穏やか
面談当日は、担任の先生のほか、学年主任、児童支援専任教諭と、合計3名が応対してくれました。
たまたま、担任が若い先生だったのですが、おそらくそうでなくとも、学年預かりの案件になるのだと思います(ポジティブな理由だとしても、形式としては不登校ですので)。
当初、3人いる中で、誰に向かって話をすればいいのかよくわからなかったのですが、最終的には、いじめや不登校を専門でケアする役割の、児童支援専任の先生が話を主導していました。
学校の先生は、その学校でホームスクーラーに対応した経験がない限り、オルタナティブ教育についての知識がまったくと言っていいほどないようです。様々な方が発信しているとおりなんだな、と思いました。
「これまで経験がなく、お話をもらって調べたのですが」「知識がないので、筋違いな話をしていたら恐縮ですが」など、かなり謙遜しながら話を進めていたのが印象的でした。
面談は落ち着いた雰囲気で進みましたが、先生方も緊張しているな、というのは伝わってきました。まあ、突然現れた保護者が、学校行かないで勉強しますというわけですから、いったい何を言い出すかとハラハラするのは当然です。
もう一つ感じたのは、児童支援専任の先生は、家庭の側に立って、制度上どうなっているかという知識を踏まえつつ、親身になってくれるということです。基本的にはこちらの考えを尊重し、応援してくれるスタンスに感じました。
私もこれまで存在を知りませんでしたが、いじめや不登校を専門にケアしているだけあって、当然といえば当然なのかもしれません。
最終的な責任者は校長先生ですが、入り口として誰と話すかは重要ですので、頼ってみてもいいかもしれません。他地域はわかりませんが、横浜市では全校に配置されているそうです。
実際に伝えたこと
1. 意欲・好奇心ベースの学習
人間は、好奇心をもち、自発的な意欲をもって取り組んでいるときが、最も知識を吸収し、飛躍的に成長するという前提に立ち、「みんなで同じことを、同じペースで、一律に進めていく」学校教育のシステムでは、学びの深さも、成長の速度にも、物足りなさを感じていると伝えました。
また、すでに知っている/理解しているとしても、決められた計画に沿って授業を受けなければならず、この時間に他のことに取り組む選択は、原則として認められていません。この無為な時間は、成長機会の致命的な損失ですよね、という話をしました。
2. 探究型の学習
「答えが決まっている設問に対して解答を求める」タイプの教育は減らし、今後は、子どもが「答えのない問題を考える」「そもそもなにが問題なのかを自分で設定する」といった方向性の教育機会を十分に得られるように希望している旨を伝えました。
3. 本質的な社会性と協調性の教育
大枠では、熊本大学・准教授の苫野一徳さんがいつも提唱している、「自由の相互承認」に近い方向性での教育を望んでいる旨を伝えました。
なお、このときに軽井沢風越学園についても少しだけ触れたのですが、先生方は存在すら知らないようでした。
4. 重視する教育分野
子どもたちが大人になる10年後を見据え、「ITへの深い理解」「マーケティング思考」「自然に親しむ姿勢」の3つを重視している旨を伝えました。
ITについては、子どもたちはすでに、一人1台のノートパソコンとスマートフォンを所持しており、チャット、ビデオ通話、オンライン授業、検索、プログラミングの基礎までを習得し、自在に使いこなしています。
マーケティングについては、原則としては実践から得られるものが多いと考えており、現在はまだ「お店屋さんごっこ」レベルのことしかできていないのですが、積極的に機会を与えていくつもりです。
自然体験は、すでに年間約30泊のキャンプのほか、トレッキング、海&川遊び、カヤック、スキー&スノーボードなど、一般的な家庭よりもかなり多く体験させており、これを年間100日程度まで引き上げるつもりです。
「自宅学習のほうが優れている」という方向性で進められればスムーズ
よりかね家の場合、学校に通えない何かしらの理由があるわけではありませんでしたので、ひたすら、「子どもにとってのベストを考えたら、自宅学習のほうが優れている」と伝えました。
あとから考えると、これが良かったのだと感じています。
結果として、すんなりと理解が得られ、「そこまで考えているのでしたら、前向きに進めましょう」という結論になりました。あとは、実際にホームスクーリングに踏み切るタイミングで、校長先生を交えて、具体的な話をするだけです。
面談の中で、特に念入りに、明確に確認されたのが、「学校生活でなにか問題がありましたか?」ということでした。
学校側としては、たとえば、いじめがあった、先生に不満がある、などの事情があれば、改善すべき重大な問題ですので、気にするのは当たり前でしょうか。
こちら方面に話が移行していった場合、数倍の労力がかかるだろうことは、おそらく間違いがありません。
子どもに様々な経験をさせるための休みが取りやすくなった
学校側にホームスクーリングの希望を伝えて、理解が得られた今、事前に想定していなかった一つのメリットに気づきました。
頻繁に休んだり、まとめて1週間休んだり、といったことが、やりやすくなった実感があるんです。
なぜなら、教育方針をしっかり伝えることができ、「そのうちホームスクーリングをする」という意向まで、(担任だけでなく)学校レベルで受け取ってもらっています。
我が家ではもともと、連休に絡めて金曜や月曜をしばしば休んでいましたが、正直なところ、あまり日数が増えるのはどうか……という気兼ねがありました。
今後は、
・1週間キャンプをしながらフィールドワーク
・興味を持った戦国武将に関連したお城めぐりに連れていく
・曜日を気にせずにトレッキングに連れ出す(天候とシーズンが重要なので、今までは、土日の天気が悪いとタイミングを逸することがあった)
といったことが、学校の理解を得た状態でできるようになります。
ホームスクーリングまでは考えていなくても、似たような価値観で、子どもにたくさんの経験をさせたい親は、しっかり教育方針を伝える機会を持つのをおすすめします。
学校側では「ダメです」とは言いませんし(そんな権利はない)、理解ある担任や、児童支援専任の先生であれば、応援してくれるはずです。
これは今回、ホームスクーリング希望を伝えてみて、はじめてわかった事実でした。
お知らせ/今後の活動
2021年現在、基本的には学校に通いつつも、積極的に数日〜1週間ほどの欠席をし、学校外の学びの場を模索する形のハイブリッドスクーリングに落ち着いています。
2020年度の学習の記録を以下にまとめていますので、よろしければ御覧ください。
なお私自身は、学校外での学びに主眼を置く以上、自分の手で、子どもにとってベストな環境を作っていきます。以下、興味のあるものがあれば、ぜひ応援をお願いします。
■「自分で決めてやってみる」がテーマの教育事業です。小学校高学年〜中学生対象。石垣島で1週間生活したり、国内最高峰の自然の中へ出かける「アドベンチャー学部」を筆頭に、プロの仕事にふれる「働く学部」、自分だけのWebページをつくる「メディア学部」など、幅広いカリキュラムを扱います。
■「やりたい!が正義」「怪我も喧嘩も学び」という価値観の、親子向けアウトドアイベント。新型コロナウイルス禍でも活動できるように一から作り直し、活動を再開しています。
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