#8 きっとかき氷売りの方が似合う君へ【短編】
小説を書くより街でかき氷を売る生活の方が時々良いように感じる。
僕は一台の屋台車を運転して、早朝に海沿いの製氷店に行く。すると既に顔なじみになった初老の男性が出てきて、いつものかい、とぶっきらぼうに言うのだ。それで僕は車内の巨大冷凍庫に直方形の氷を積み込む。その氷は決して家庭で作ったみたいに空気が混ざり込んでなくて、どこまでも澄んでいる。透明な彼女らを次々と運び込むたびに、僕は小さな幸福を感じる。美しいものに毎日出会うという事は、この世界では中々に恵まれている事だからだ