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劇評

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#細川洋平

ほろびて『苗をうえる』

ひとりの登場人物の不条理な身体的変化が前面に出てくるので隠れがちだけど、今回の大きなモチーフはヤングケアラー。描かれるのは2つのケースで、それぞれのそうなってしまった経緯と当事者達の内面や背景が詳らかになるうち、気が遠くなるような“こじれた現実”が見えてくる。
誰もそうしたくてそうなったわけではないのに、バッドタイミング、方向違いの優しさ、飲み込んだ言葉、小さなわがままなどが少しずつ溜まって、そこ

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ニナガワの子供達をイワマツの養子にという夢は叶わないですか? さいたまネクスト・シアター『雨花のけもの』

ニナガワの子供達をイワマツの養子にという夢は叶わないですか? さいたまネクスト・シアター『雨花のけもの』

故・蜷川幸雄が2008年末に立ち上げたさいたまネクスト・シアターが、この公演を最後に解散する。

蜷川は、芸術監督を務めていた彩の国さいたま芸術劇場で、演劇経験を問わない高齢者を集めたさいたまゴールド・シアターと、プロの俳優を目指す若者を集めたネクスト、2つの俳優集団の育成に取り組み、晩年は双方を混ぜて海外の複数の劇場から招聘される作品づくりに至った。けれどもその死から5年、どちらの集団も継続が難

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