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新型コロナウイルス感染拡大から、SDGsを考える

いま、SDGsが「自分ごと化」している

SDGsの課題のひとつに、その中身が「なかなか身近に感じられない」ことがあると思います。至るところで「SDGsを自分ごと化しよう!」と謳われているのも、その裏返しと言えます。

一方、いま私たちの周りには、新型コロナウイルスのニュースが目まぐるしく駆け回り、多かれ少なかれ、誰もが仕事・家庭・学校などで影響を受けて「自分ごと」になっているのではないかと思います。

この新型コロナウイルス感染は、まさにSDGsの一部です。SDGsには169のターゲット(具体的な目標)がありますが、その一つに

Target 3.3:2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。

とあります。世界が2030年までに解決すべきと掲げた課題は、確かに存在していて、瞬く間に国境を越えて世界の、そして私たちの日常を脅かすものであることが、いま目の前に突きつけられていると言えます。以前なら、多くの人が「どこか遠い国の問題」と捉えていたものかもしれません。

そこで、いまこの時を、SDGsを「自分ごと」として捉えられる機会として、改めて新型コロナウイルスから、SDGsを考えてみたいと思います。

企業が次々と支援を発表 ~本業を通じてSDGsに取り組む

今回、企業でのテレワーク推進、小中高校の一斉休校、人が集まるイベントの中止などを受けて、オンラインのコミュニケーションツールや学習コンテンツ、漫画や音楽などのエンターテイメント配信サービスなどが次々と無料開放されました。(この画像も、その一環で株式会社アフロ様が無償提供したものです)

これらは直接的に感染拡大を止めるものではないものの、「人が集まらなくてもよい」環境を、できるだけ生活の質を落とさずに整えていくという意味で、感染拡大防止につながるものと考えられます。

一般的にまだ、SDGsのような社会課題は、(1)政府や非営利組織が取り組むもの、または(2)企業が(収益を考えない)社会貢献として取り組むもの、と捉えられがちです。

しかし今回、(1)提供された製品・サービスは、それぞれの企業の強みを活かした独自のもので、その多様性やスピード感も、政府だけに頼っていては難しかったと考えられます。

そして、(2)無償提供すれば、その時点での収益はマイナスです。けれど、それによって生まれる、初めて製品やサービスに触れた人が利点を体感して今後ユーザーとなっていく可能性、これまでアプローチできなかった人が利用することで新たな製品やサービス開発につながる可能性、そして何より、こうした事態に自らの製品やサービスが喜ばれ、社会を良くすることに貢献している実感から仕事に誇りを見出せる可能性などは、一時的なマイナスの収益を埋めて余りある価値となるかもしれません。

社会のあらゆる課題への対応は、政府や非営利組織だけでは不十分で、企業の力が不可欠です。そしてそれは、従来の、本業の横で行われる「CSR:社会的責任」ではなく、本業そのもので関わることではじめて、企業の力が課題解決に活かされ、それがまた、企業の力になっていくという循環が生まれるのではないでしょうか。

「健康」だけの問題ではない ~ゴールは互いに関連している

SDGsの理解されにくいもう一つに、「ゴールは相互に関連している」点があります。17のゴールは独立しているのではなく、それぞれが関連し合っているので、あるゴールを達成するには、それに関連している他のゴールも含めた横断的なアプローチが必要だ、ということです。

実際に今回、新型コロナウイルスという健康に関わる問題(ゴール3)は、これを機に働き方の多様化が進んでいくこと(ゴール8)、このような環境でもすべての子供たちが質の高い教育を受けられること(ゴール4)、その過程でITを活用したイノベーションが促進されること(ゴール9)、など他の課題とも絡み合いながら、そして、世界に広がる問題として各国が緊密に連携しあって(ゴール17)その解決が図られています。

コメント 2020-03-04 001519

そして「誰一人取り残さない」解決を

多くの社会課題は、立場の弱い人々に最も大きな被害が及ぶと言われます。今回も例外ではなく、感染による死亡リスクは、高齢者ほど高くなっています。子供たちは休校の影響を受け、貧困な家庭ほど、その間の食事や教育、生活の質が低下しているかもしれません。他に頼れず仕事を休まざるをえない家庭の所得は、さらに低下するかもしれません。既に深刻な経済的損害を受けている中小企業・小規模事業者も少なくないと思います。今後、検査や治療を受けられる機会に格差が出てくるかもしれません。

SDGsの最も重要なメッセージの一つは、「誰一人取り残さない:Leave no one behind」。今回の新型コロナウイルス感染拡大への対応が、このSDGsの精神のもとで誰一人取り残されずに進められ、その先に、より持続可能な世界が訪れることを願いながら、そのために自分たちに何ができるかを、考えていきたいと思います。

(文 今尾江美子)

#SDGs #新型コロナウイルス


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