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宇宙人からの手紙①太陽系小惑星のひとつからあなたへ依頼があります。

はじめまして。私はあなたたちのいう太陽系の小惑星の1つに住んでいる高度知的生命体です。


これを読んでいるあなたはさぞ驚かれていることでしょう。なんの悪戯かと思っているかもしれません。ですが、これは悪戯ではありません。

この手紙は、あなたとわれわれの仲間のみに見えるよう細工を施してあります。文字はあなたのもっとも快適な言語に見えるようになっています。

不信に思われたならこれを他者に見せてください。これを他者が読めた場合、それは私たちの調査隊であるか、この手紙が嘘であるかです。嘘だと思ったなら、暇な人間がいるものだと笑ってこの手紙をゴミ箱へ放り投げてください。

本題に入りますが、私たちは地球と、そこに住まう人に興味を持っています。地球を侵略しようとは思っていませんのでそこはご安心ください。私たちはあなたたちが好きなのです。ですが、あなたたちに"宇宙人"として見つかりたくないとも思っています。

地球の感覚では長い時間と言える期間の調査によって私たちは地球に対する"知識"を多く身につけました。ですが分からないのはそこに住まう人間です。

先ほどすでに記してしまいましたが、私たちの調査隊のなかでいくらかのものが、地球人に扮して生活をしています。ですが、彼らの情報だけでは足りないのです。そして私たちだけでは活動に限界があります。これでは私たちの知りたいという欲求が満ちないのです。あなたたち地球人は私たちの理解を越えている。だからこそ、私たちは地球への興味がつきないのです。

そこで、あなたにお願いしたい。あなたのことを教えてくれませんか?

悪用など決してしません。私たちに手紙を送る感覚で良いのです。初めて知り合ったもの同士が己はどんな人間かを話す、もしくは日記を記す、そんな感じで、私たちにあなたを教えてください。あなたがどんな人で、どんな経験をして、何を感じて生きてきたのか、それが知りたいのです。

ただし、私たちのことは聞かないでください。あなただけについて話してください。他者についてもまた別の調査になるので話さないでください。私たちからの次の連絡はまたあるかもしれないし、無いかもしれません。聞きたいことだけを残していくこともあるかもしれません。

ある場合は今回同様、あなたの机に残しましょう。

あなたは返事の手紙を、あなたの机の上に並ぶ本のどれかの、75ページに挟んでください。私たちが回収します。

それから、この手紙や私たちの話を、他の地球人にはしない方がよいかと思います。それは私たちのためではありません。あなたのためです。然るべき機関に連れていかれるか、頭のイカれた人だと思われるだろう、と私たちは予想します。

願わくは、あなたがこの話を信じ、私たちに協力してくれますよう。

それでは。

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朝起きてこの手紙を見つけた私は、私が飽きてしまうまでそれに返事をしていくことにしました。

私がこの怪しい手紙に返事をしようと思ったのは、そこに明確な、そして私の知らない受け取り手がいる、それを意識して私のはなしをしようと思ったからです。

私が返事をすることでいつか宇宙人に地球が侵略されるかもしれませんが、まあいいいでしょう。

そのときはごめんなさいと、先に謝っておくことにします。

その日まであなたの日々が幸多からんことを。

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