【4】学会へ行こう
「学会」といえば、「追放」とインプットされている人は多いと思うが、現実の学会はあまり会員を追放するところではない。
一般的には、入会申し込みをして、年会費を支払えば会員になることができ、会費を滞納しても、督促状は来るが、すぐに除籍になることはない。
とは言ったものの、国内学会でも年間一万円ほどの年会費を支払ってまで学会に入る目的は、いったいなんだろう?
その一番の目的は「学会発表」をすることだ。
それなりの規模の学会なら、以下の活動をしている。
◆ 年次大会の開催(ここで「学会発表」をすることができる)
◆ 学会誌の発行(ここで「論文」を発表することができる)
一般には、テレビのニュースなどで「学会発表」の風景(スライドを上映して講演する)が報道されることがあるが、中には「ずいぶん狭いところでやってるな」と、思われたことがないだろうか。
会員数の多い学会になると、発表の演題数も多いので、一般的にはどこかの大学を会場として、普段は講義に使われている教室を使うので、わりとそんなもんである。
また、数が多いので、内容もピンキリ。玉石混交。
学会の会員に登録すれば、普通は発表を断られることはないので、ある意味、何を発表してもよい。
とはいえ、自分が研究してきた内容を、しかるべき学会に参加して、学会発表をしてみると、ちょっと「科学者」っぽい気分が盛り上がるだろう。
さて、【2】の余談でも紹介したスタニスワフ・レムの小説『泰平ヨンの未来学会議』は、主人公が学会に参加するところから始まるが、その中に「逍遥派」の学者、という表現が出てくる。
これが「逍遥学派」なら、散歩しながら語らったというアリストテレスの学派を指すようだが、こちらの「逍遥派」は学会を「逍遥」する(笑)。
学会の年次大会は、普通毎年別の場所で行われるので、参加するといろいろな土地を「逍遥」することができる。
ある意味、科学者の楽しみの一つとはいえるが、そっちの方が目的になってるっぽいのが「逍遥派」という訳だ(笑)。そう思われないように自戒したい(笑)。
とはいえ、自分の身に置き換えても、これまでに国内なら北は札幌、旭川から南は北九州、国外ではアリゾナ、フロリダ、オレゴン、シアトル、ヴェネツィア、ポルトなど、ありがたいことにあちこち「逍遥」もさせてもらった。
ヴェネツィアの時などは、会場がなんと国際映画祭の建物だった。忘れられない体験である。
因みに、日本の学会ではあまりないが、海外の学会では、受付で要旨集などの必要物と一緒に学会のロゴ入りのバッグが手渡されることが多い。
そして、ネームプレートを首からぶら下げて、講演を聴いたりポスター発表を観たり、学会でしか会えない友人知人と旧交をあたためたりする。
アクティブなSFファンの方なら、SF大会などのコンベンションイベントを連想するかもしれないが、概ね間違いない(笑)。
因みに、年次大会の英語名も、なんとかコンベンション、なんとかコングレスなどと呼称されるものがよくある。
学会に行くようになると、世界SF大会と和訳されるワールドコンのようなイベントはもともと学会の形式を模したものだったんだろうな、ということがなんとなくわかるようになる。
翻訳家の矢野徹先生といえば、日本人で初めてワールドコンに参加されたことで知られるが、ご存命の頃は、日本SF大会だけでなく、地方で開催される小規模のローカルコンと言われるイベントにもよく参加されていて、合宿では「狂乱酒場」という部屋に陣取って、楽しそうにお酒を飲んでおられたものだ。
参考になるかわからないが(笑)、海外のビールの学会なら、参加者は昼からビール片手に会場を歩き回っていたりする。
なるほど、お酒を飲みながらコンベンションをするのは、SFファンの専売特許ではなかったのだ(笑)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?