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文系が宇宙開発に関わるということ

このような仕事をしているとよく聞かれることがあります。

「文系でも宇宙開発に関わることができますか?」

結論から言ってしまえば、「関わることはできますが、皆さんが想像する華やかなものではないかもしれません。」です。

私自身、法学部出身で宇宙のことはまったく知らないし、そもそも小さい頃から宇宙大好きとかそういったこともありませんでした。
詳細は以下で語っていますので、まだ読んだことないよという方には読んでいただきたいです。
https://note.com/k_spacebusiness/n/n547b50625159

今回は宇宙関連企業で数年働いて感じたことを赤裸々に語ろうと思います。


そもそもどんな文系が宇宙関連企業で働いているのか?

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けっこうこれ気になりますよね。
宇宙というとめちゃくちゃエリートが働いているんじゃないとか思う方もたくさんいると思います。

でも、実態は本当に私含め普通の学生が採用されています。

私のように法律学んでいた学生、英語バリバリ話せる系(どこの企業にもいますよね笑)、会計の勉強をしていた学生などなど…

あまり宇宙が小さい頃から大好きでたまらないという人はいないイメージです。
どちらかというと「宇宙」と客観的に向き合える人が多い感じがします。
ここはポイントなのかもしれません。(少なくとも私の勤める企業においては…)

客観的ってどういうことだっていうと、具体的には宇宙業界で問題になっていることに、自分がどういうふうにアプローチできるのかをしっかり考えられているかということだと思っています。

私であれば、宇宙をビジネスのツールとして利用するということを面接のときから話をしていました。そもそも今はほとんど宇宙というフィールドをビジネスとして使えていないですからね。
私の同期であれば、国際的な観点で宇宙開発をいかに利用できるか、自分が持つスキル(会計などの知識)で宇宙開発をどのように支えられるかなどやはり宇宙といったものに客観的に向き合っているイメージがありました。

結論、いろんなバックグラウンドを持った文系が宇宙開発に関わっているということです。これは紛れもない事実です。


実際どんな業務を行うのか?

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じゃあいざ入社したらどんな業務を行うのかってことですよね。

実態としては、他企業でもできるようなコーポレート部門の仕事や現場の総務系業務、法務業務などの業務を行うことがほとんどです。
それか営業職ですね。(これも技術系のサポートのような面が強くなります。)

これってどの企業に行っても一緒なんですが、事務系(文系)はジェネラリスト的な育て方をされます。
だって、専門性なんて皆無なのでポテンシャル採用をしてまずはいろんな業務を知ってもらうしかないわけです。
(私の同期の修士卒曰く、修士でも結局中途半端なんだよ…とのこと。これは技術系の話になりますけどね。)

ですので、最初は泥臭い仕事が多いです。
私も最初は現場の総務系業務でした。事業所管理というと分かりやすいでしょうか。宇宙開発に携わるはずが、コピー機の調達や清掃の契約などを行っていました。

ここでほとんどの人があれ?っと思うわけですよね。
自分はこんなことがしたくてこの業界に入ったんじゃないって。

私もすごく思いましたよ。すぐに転職してやろうと思いました。
でも先ほどもお伝えした通り、我々事務系はポテンシャル採用なのです。これは仕方がないことなんですよね。
(ちなみに入社1,2年で辞めた人もたくさんいますが、ほとんどの人が次の会社行ってもまた同じような文句を言っています。)

これは雇われかつ事務系である以上、仕方のないことなんです。
この構造を理解していないのに、文句を言っている人があまりにも多すぎます。(私も文句言ってましたけどね笑)

結論、宇宙業界に来たから特別なことができるかというと決してそうではないということです!


メジャーに憧れる人にはニッチな仕事はできない

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私は、なんだかんだニッチな仕事が好きです。
もちろんメジャーに憧れることは多々あります。でもあまのじゃくなので、やはりニッチな仕事のほうが自分には合っています。

何を言いたいかというと、宇宙開発自体がすごくニッチなお仕事なので、メジャーなスキルは身につけにくいということです。

宇宙開発まわりのフライト品ってそもそも宇宙専用に作っているものが多くて民生品ってほとんどないわけです。そうなると、技術的にもどんどん狭まっていくということは想像も用意でしょう。

事務系も例外ではなく、お付き合いする企業は決まってくるし、業界としてもすごく狭いのが宇宙業界なのです。もちろん身につくスキルもニッチなものになってきます。

分かりやすく言えば、自動車一台の生産コストは競合他社もたくさんいますし、みんなほしい情報ですよね?でもロケット一機の生産コストって知ったところでへーそうなんだで終わっちゃうんですよ。
つまり宇宙業界はプレーヤが少ないため、その情報自体需要が少ないものになってしまっているわけです。

そうなるともちろんそこにいる人材もニッチなところにも対応できるものにしていかなければならない。
結果、メジャーな知識も身につけたいという人は早々と宇宙業界を離れてしまうわけです。


どういった文系に宇宙業界はおすすめできるか?

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これは私の考えでしかありませんが、どういった文系が宇宙業界に向いているかをお伝えさせていただきます。
逆にここにあてはまらない場合は、もっと他にいい道があるかもしれません。

①自らビジネスを行いたい人


私もそうですが自らビジネスを行ってみたいという人にはおすすめできる業界です。


なぜなら、それは圧倒的にライバルが少ないから、かつニッチな仕事なため、情報を掴めている人が少ないからです。


「売上=客数×単価×リピート率」で考えていくわけですが、そもそも現段階では客数は見込めません。それはほとんどのサービスが現時点では実現不可能なものばかりだからです。実現可能なものであってもユーザー側がどういったふうに使いたいか理解しきれていないため、いいサービスを提供しても客数が右肩上がりに伸びるわけではない。

自ら宇宙ビジネスをやっているわけではないので、他者の批判にしかなりませんが、宇宙関連ビジネスをあまりにも長いスパンで捉えている人がこの界隈では多すぎるように思います。

単価は高すぎる、リピートもそもそも需要が見込めていないため予想できない。売上の構成要素を現時点では何一つとして達成できていない業界なんです。
(もちろんいろんな反論もあると思いますので受け付けますが、少なくとも私の考えはこの通りです。)

ですので、まだまだ発展途上の分野であるとともに今後需要の高まる業界と言われています。

こちらは日本政策投資銀行(DBJ)がまとめた日本の宇宙産業についてまとめたレポートですが、中身を見れば今後も発展の余地がある分野だというのはお分かりいただけるかと思います。

ライバルが少ない、業界として発展の可能性があるという2点を兼ね備えた宇宙業界は自らビジネスを行いたいという人にはぴったりなのではないかと考えます。

しかし、自らビジネスを始めるにはニッチな知識だけではだめなので、自らメジャーな知識を貯め続ける必要はあります。


②間接的に宇宙に関われればいいと思える人


自分が主役にならなくてもいい、技術系の黒子でいい、地味な仕事をずっと続けたいという人にはある意味ぴったりな業界なのかもしれません。

先ほども述べたように業界としては伸びていくはずなので、クビを切られる可能性も少ないですし、何がいいと考えるかは人それぞれなので、技術系を真に支えたいと思えるサポートタイプの人には合っていると思います。

少なくとも私にはない発想なので、あまり理解はできませんが、これはこれでいいんじゃないかなと思います。
(実際に私の周りにもこういった考えの方もたくさんいます。)

これは宇宙への関わり方の問題なんだと思います。
例えば、自分が関わった契約が宇宙に関連するもので満足できるのか、それとも自分が業務で関わった衛星を飛ばしたいのかの違いです。
前者のような形でもいいから宇宙に関われればいい!と思えるのであれば、宇宙業界に事務系としてはすごく幸せなのだと思います。


③周りがやっていないことをやることに生きがいを感じられる人


これは私もあてはまるんですが、こういったニッチな仕事は誰でもできるわけではないので、いざ関わり始めるとすごく面白い世界です。

しかし、このニッチというのがいつまで続くのかが問題です。
プログラマーなんて20年ほど前はすごく珍しい存在だったかもしれませんが、今では中高生のプログラマーだっているくらいです。
宇宙だってそれくらい当たり前の世界がやってくるかもしれません。

ですので、これだけをモチベーションにして宇宙業界に入ってくることはあまりおすすめはできません。


さいごに

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夢をぶち壊すようで申し訳ないですが、残念ながら宇宙開発は皆さんが思っている以上に泥臭いものです。
宇宙業界に入った技術系の人だっていろんな観点で悩んでいます。それはよく聞きます。
事務系はなおさら悩むわけです笑

しかし、いろんな可能性を秘めていることは間違いありません。
これは実際にこの業界に今関わっている私が保証です。
いろんなことにチャレンジしやすい業界ですし、実際に私も副業の一環で宇宙ビジネスに関わり始めています。(これはもう少し経ってからオープンにしますね。)

今回はリアルを突き付けてしまいましたが、それでも宇宙開発に関わりたいという人はたくさんいると思います。
学生さん、社会人問いませんので、いろいろ気になることがあれば直接お話しできるとうれしいです。
私のTwitterアカウントであるK.Kawai@宇宙ビジネス(@k_spacebusiness)のDMは常に開放しております。

簡単なものではないという実情を知ったうえで、ぜひこの業界に歩みを進めていただけると私としてもすごくうれしいなと思っております。
歩美を進めて気づくのではあまりにも残酷ですからね。

今後もいろんな宇宙業界関連の記事を書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。




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