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13歳からのアート思考#3

13歳からのアート思考#1はこちら
https://note.com/k_ryoma/n/n0ebd85bc1480
13歳のアート思考#2はこちら
https://note.com/k_ryoma/n/nd125dba93506

読まれていない方はぜひご覧ください。

リアルについて

目に映る世界には嘘がある

普段テレビやSNSなどで絵を見て上手いなーと感じるのは「リアル」に近い絵ではないでしょうか?私はずっと「そっくりだな」「本物のようだ」とリアルに近い=上手いという感覚しかありませんでした。

しかし、その目に映る世界には嘘があるというのが今回のテーマです。

今頭の中にサイコロをリアルに描いてみてください。

どんなサイコロが描けましたか?

画像1

・正面から見たサイコロですか?

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・斜めに描いて立体感のあるサイコロですか?

画像3

・影をしっかりとつけたサイコロですか?

・半透明で裏側が何面か見えるサイコロですか?
イメージの画像が探せませんでしたが、色が塗られていないので反対側の数字が見えるサイコロをイメージしてください。

サイコロを描いた時に『どのようにリアル』を判断したでしょうか?それが今あなたの「ものの見方」だそうです。

本当は6パターン絵が掲載されていて選択するのですが、似たようなものがあったので4つに絞って、イメージに合う画像を用意してみました。

ピカソのリアル

ピカソという画家を知らない人は少ないと思います。人生で一度は聞いたことのある名前ですよね。

ピカソの作品に『アビニヨンの娘たち』という作品があります。

あなたはこの絵をリアルだと思いますか?想像して見ていただきたいので、リンクを貼っておきました。

私はこの絵を見た時に驚きました。
ピカソの描くリアルとは一体なんだ!?という疑問とともに、「やはりアートが理解できないかもしれない・・」と感じてしまったのです。

この絵は数あるピカソの作品の中でも歴史に残る名作のひとつとされているそうです。

しかし、ピカソがこの絵を発表したときに周囲の評価がよかったわけではないようです。ピカソを高く評価していた人からも「フランス美術にとっての損失」などと言われてしまったほどです。

遠近法のウソ

ピカソがなぜ『あの絵』を描いたのかというと、それまでと違う「リアルさ」を表現した結果生まれたのが「アビニヨンの娘たち」だったのです。

普段見かけるリアルな絵は、『遠近法』を使って描かれていることが多いです。平面の紙に3次元空間を描きだす技法で、先ほどのサイコロを思い出していただければわかりやすいです。

私はサイコロを斜めに描いてリアルに見せていることが『遠近法』を使った描き方だったなんて、考えたこともありませんでした。

名称未設定のデザイン (3)

このように手前の角と奥の角を描くことによって「リアルに見える遠近法」が使われているのです。

この絵はリアルに見えますが、見える面には3、5、6しかありません。

『遠近法で描かれた絵は、常に半分のリアルしか映し出せない』ので、残り半分に大きなウソが隠れていても、そこを捉えることはできません。

私たちの視覚は機械のように正確ではないので、今までの経験などから見え方が変わってきたり、すぐにだまされてしまったりもします。

トリックアート館に行ったことがある人は想像がしやすいのではないでしょうか?あれは人の視覚を利用した空間ですよね。写真に撮ると、地面に描かれた背景とマッチして「リアル」に表現できるように計算されています。

模倣ではなく再構築

ピカソが『アビニヨンの娘たち』を描いたのは、前回の記事で書いたマティスの肖像画の少しあとになります。カメラが登場して「アートにしか出来ないことは何か?」とアーティストたちが考えていた頃です。

遠近法の技術を利用した描き方は、ピカソが生まれる500年以上前から存在しており、代表的な作品としてレオナルド・ダヴィンチの『モナリザ』があります。

ひとつの視点から視覚だけを使って見た遠近法に疑問を抱いたピカソが、新しいリアルさを求めた結果『さまざまな視点から認識した物を1つの画面に再構築する』ことになりました。

その表現方法を使った作品が『アビニヨンの娘たち』になります。

『アビニヨンの娘たち』はそのまま見ると、アンバランスでありカクカクしていてバランスが悪く見えます。多方面からの認識を取り入れた結果あのような絵となったのです。

まるでダヴィンチの『モナリザ』への挑戦のように遠近法とは全く違う方法で、リアルを追究しました。

実際に自分に落とし込んで、多方面の視点を意識してみてもやはり「遠近法」で描かれた作品の方がリアルに感じてしまうのが正直な感想です。

しかし、今まで真正面からしか見ることのなかった絵画を少し違った角度で見てみようかな?って思えてきました。

私と同じように「正面から見るだけ」だったかもしれない「あなた」は別の見方を手に入れました。次に美術館に行くことが少しワクワクしてきたんじゃないでしょうか?

今回の記事では作品の描かれ方にフォーカスしてきました。
次回は『アートの見方』について書いていきます。


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