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本屋は、未知で、自分で、宇宙だ。

最後に本屋へ足を運んだのはいつだろう。ここから1番近い本屋、どこだっけ。私も、以前はそんな人のうちの1人だった。

ECサイト、フリマアプリ。いつでもどこでも、本が買えるようになった。口コミも読めるし、おすすめまでしてくれる。

そして今、小さな本屋さんが、ぽつり、ぽつりと、なくなっている。

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ある人と「どんなデートをしてみたい?」と話していたとき、「2人で本屋に行きたい。」と答えた。本屋に行けば、相手のことをもっと知れる気がした。どんなペースで、どんなルートで本屋を歩いて、どんな本に目を奪われて立ち止まって、どんな話をするんだろう。妄想が、どんどん膨らんでいった。

本屋は、私の好きな場所の1つです。新しい土地で、時間がある時は必ず「地名 本屋」と検索しては足を運び、今もなお、お気に入りの本屋は増えていくばかり...

本屋が好き。いや、厳密には、私は本屋が好きなんだと最近になって気づきました。

なんで、好きなんだろう。

「好きなものは好き」でいいのだけれど、今一度少し考えてみたので、ここに2つ記しておこうと思います。

現実との距離を少し置いて、未知の世界に浸る

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本屋には、自分の知らない本がズラーっと並んでいる。「ああつまんないなあ」と人生に疲れたとき、人生のつまらなさを悟っていたつもりでも、この世界にはまだまだ知らないことがたくさんある、と気づかされる。

「知らない世界」に浸りたいなら、SNSを開いたり、海外なんかに行ったりしてもいい。最近は、「知らない」ことへの不安や「知らなきゃよかった」という後悔が生まれるほどに、「知らない世界」へのアクセスが簡単になったように思う。

じゃあ、本屋はどういう場所になるんだろう。

「本」は言葉と挿絵で宇宙(世界や人)を切り取り、表現している。そんな本が、本屋にはたくさん並んでいる。そこに、美しい装丁や紙の匂い。本を手にとりたくなるよう設計された空間。本屋には、隅々まで「未知の楽しみ」が敷き詰められている。

何も買わなかったとしても、本屋に立ち寄ると満たされる。それは、現実との距離を少し置いて、未知の世界に浸る、そうした本屋での時間そのものが心地よいからなんじゃないかなあ。

本屋にいくと、自分が映し出される

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ふらっと本屋に入ったとき、まずどのコーナーに向かうか。その足の向かう方向に、自分の悩みや関心事が現れることは多いです。

仕事で悩んでいたら実用書、癒されたいときはエッセイ集のコーナー、自分を磨きたいときはファッション雑誌の前へ。同じジャンル内でも惹かれる本が変化していく度に、自分の志向や興味の変化にふと気づかされます。

「あれ、この本買うつもりなかったのにな。」と気づけば手元に新しい本を握っている時もあります。「ふと本屋に入ってしまうということは、自分を呼んでいる本がある」なんて聞いたことも。きっと、そう。

「少しの間、現実から目を背けたい。」「もっともっと、新しいことを知りたい。」そんな気持ちで本屋に行ったとしても、その本屋にいるのは現実の、現在の自分でしかなく。

アルゴリズムが示す「あなたへのおすすめ」よりも、自分の悩みや興味は、自分が1番知っている。まだ見えていない、気づいていなかったことが、本の中で言葉にされていることもある。「ああ、私これが知りたかったんだ。」と本屋に教えてもらうことって、意外と多い。

本屋に足を運び、棚の隙間を静かに歩きながら、どんな本があるかなあ、と物色する。それは、自己と対話する貴重な時間でもあるんだろう。

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最後に、私のお気に入りの本屋さん、または行ってみたくてしょうがない本屋さんを3つ紹介して終わります。

⒈ 本屋での時間に、お金を払う。

文喫 BUNKITSU | 本と出会うための本屋。/ 場所:〒106-0032 東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F / 時間:9:00~21:00(L.O.20:30) / 入場料:1,500円(税別) ※土日祝の入場料は1,800円(税別)

⒉ 本屋の空間そのものが、コンテンツ。

角川武蔵野ミュージアム / 場所:〒359-0023 埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 / 時間:日~木曜 10:00~18:00(最終入場 17:30)金・土曜のみ 10:00~21:00(最終入場 20:30) / 休館日:毎月第1・第3・第5火曜日(祝日の場合は開館・翌日閉館)/ 入場料:サイト参照

⒊ 「整然たらず」に並ぶ本に、雑貨に。

恵文社一乗寺店 / 場所:〒606-8184 京都市左京区一乗寺払殿町10 / 時間:11:00〜19:00(年中無休 ※元日を除く)

私は、未知なる新しい世界、まだ見えていない自分のことを、「本屋」という宇宙にゆだねていたい。また、本屋が、私を呼んでいる。

ぽつり、ぽつり、なくなっていく本屋に、活気が戻りますように。

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