ある子を泣かせました 

いつも来る、4人組の男の子。
学習塾を経営している中で、ウチは小学生が少ない。今年は多めで、子どもたちが連れ添ってくる。

まだ年端もいかない彼らは、周りもお構いなくワーワー騒ぎながら、1人勉強ノートを作っていた。中学生の自習をみていると、だんだんヒートアップしてくる。

そんなときは、たまに制するというのがお決まりのパターンだ。

ある日、体の大きな少年A君が、気の弱い子B君に対して、ちょっかいを出していた。ペットボトルや、レインボースプリングで、彼のことを叩く。

「おいやめろー」

断るのか断らないのか、B君は、その子に抵抗している。

私は、A君がはしゃぐより、大きな声で、

「ねぇ、俺、君が他の人に嫌われるの嫌なのさ!」

一瞬3人と、指導していた中学生も、私を見る。

「まずさ、Bくん、そうやられて嬉しい?」
「んー、うれしくはないなぁ…」
「俺も、うれしくない」

A君は、おちゃらけたように

「はいはいー」

といいながら、挙動不審。

「あのね、叩かれているのを、まわりの人が見たらね。えーあの子、あんな事するの? 近寄りたくないってなるの」

下をむき始め、眼が赤くなる。

「B君さ、A君が嫌われ者になるのと、人気者になるの、どっちが嬉しい?」
「それは人気者のほうがいいなぁ」

B君は、顔をあげて、私をみたりA君をみたりしながら、しばらくして子どもらしい真っ直ぐな眼で、A君を見た。

A君は、突っ伏した。

「な、A君が人気者だと、B君も嬉しいって♬」

A君は、顔をあげて、真っ赤に腫らした目を見開いて、うなづいた。

「はぁい」

パァンと手を叩き、私は言う。

「はい、んじゃ終わり」

何事もなかったかのように、もう1人が一瞬笑い、勉強を始める。つられてB君も勉強を始めた。

何かをA君が2人に話しかけ、3人は勉強を始めた。

私は目力を抜き、丸の顔に戻し、業務に戻った。

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