仕事で着ぐるみの中の人になったら、30年の人生の中でもSSレア級の誉め言葉をもらった話
地域商社の広報はなんでも屋です。少なくとも私にとっては。
毎日あっちもこっちもと手広くやっていると、人のご縁や成り行きや偶然の産物で、いろんな仕事が飛び込んできます。
その中のひとつが「着ぐるみの中の人」。
ところで、私の住む宮崎県新富町には、マスコットキャラクターがいます。
名を「おとみちゃん」。
「しんとみ」だから、「おとみ」ちゃん。
得意なことは、お手紙を書くこと。
好きなことは、おしゃれとサッカー観戦、おいしいごはんを食べること。
ちょっと恥ずかしがり屋だけど、楽しいことが大好きな女の子です。
そんな過程で誕生したキャラクターで、公式サイトもあります。
お洋服もたくさん持っていて、とてもおしゃれ。
かわいいですね。
おとみちゃんは新富町のマスコットキャラクターですが、活動の拠点はこゆ財団に置いています。
ところで、私は仕事の一環で着ぐるみの中の人をやっています。
因果関係を深く考えてはいけない。
おとみちゃんは最初から最後までおとみちゃんであって、他の誰でもありません。
大切なのは世界観。そこのところ、あたたかいご理解とぬくもりのまなざしをよろしくお願いいたします。
さて、着ぐるみは、基本的に喋りません。
なので、すべての感情表現を体の動きだけで頑張ることになります。
その上、普段よりも大きな身体になるため、動きも同じくらい大きくしないと伝わりません。(「踊って!」なんてリクエストがあった日には……)
当然ですが、かわいい女の子の着ぐるみを着るときは、動きまで完璧にかわいい女の子になりきる必要があります。
たとえ小学校の頃から男の子ブランドの半ズボンが友達だった人間であろうが、中学時代の写真がほぼ完全に運動部男子の顔をしていた人間であろうが、そのルールは絶対です。
かわいいガワを被っているためか、顔が見えない安心感からか、はたまた元々素質があったのか、私はどんどん「かわいい女の子」の動きやポーズを編み出していきました。
(家でポーズを研究して、鏡に映った自分にちょっとテンションが下がることもありましたが)
その成果は、ふれあった町の人たちの声に表れました。
「かわいい~!」「すっごくかわいい!」
「なにこの子かわいいー!」
「写真とっていいですか?」「握手して!」
ありがとうございます。
いえ、こちらの話です。
さて。
着ぐるみということで、やはり一番もてはやしてくれるのが子どもたち。
時には近隣の小学校や保育園・幼稚園のイベントにご招待いただき、お邪魔することもあります。
それは、町内のとある保育園のお誕生日会に呼ばれたときのことでした。
もう部屋に入った瞬間から、こう。
嬉しいものですね。
1歳から5歳くらいまでの元気いっぱいな子どもたち。
ほとばしるパッション。全力の歓迎をしてもらいました。
中でも喜んでくれたのが、ちょっとおませになってきた女の子たち。キャラクターと女の子同士ということで、まるで本当のお友達のように接してくれました。
そして、お誕生会もお開きに近づいてきたとき。
ずっともの言いたげにこちらを見ていた一人の女の子が、意を決したようにテテテと私(着ぐるみ)の方へ近づいてきました。
そして、両手の指を組み、絵に描いたような「うっとり」のポーズでこう言ったのです。
「はぁ……(ため息)世界一かわいい……!」
聞きましたか。
ミスコンも東京ガールズコレクションもパリコレもすっ飛ばして、いきなりワールドチャンピオンです。
「世界一かわいい」
ここまで言われること、これまで30年の人生であったでしょうか。
生まれたての頃ならあったかもしれません。
お母さん、その節はありがとう。
少なくとも、大人になってからはまず言われることのない誉め言葉。
この一言で、私の自己肯定感は
別に私自身に言われた言葉ではないのですが……僭越ながら「中の人」として命を与えていると考えると、5分の1くらいはもらっていい誉め言葉じゃないかなあと思うわけです。
とても単純で月並みな言葉ですが、「やってよかったなあ」と心から思いました。
そんなこんなですっかり味をしめた私は、運動部由来で有り余る体力と「また言われたい」という欲をもとに、今日も踊れる曲のレパートリーを増やしたりしているのでした。
おしまい!
※余談ですが、おとみちゃんはTwitter(現X)もやっています。
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