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人事とは「ひとごと」なのか?

先日、社会保険労務士のセミナーがあり、Zoom配信されていたのを視聴しました。

話題の一つに10月に同一労働同一賃金に関する重要な裁判の判決内容があり、時々に各発言者が意見を述べていました。

判決では非正規労働者の待遇の改善要求について認められたもの、認められなかったものがあります。

認められたものを端的に尖った表現をすれば「正規社員と非正規社員との間に違法な差別があった」となります。

同じ日本の企業で、同じ人間が差別をする。大きな問題です。

これに対して社労士さんが「私の事務所にもクライアント企業から相談が多く寄せられるようになった」と事もなげに言う姿勢に違和感を感じます。

そもそもこれらの論点は1年以上前から社労士なら話題となっていますし、これらの課題に「事前に」「相談者から相談される前に」企業を観察し、敏感に問題視し、企業へ提案し、解決するのが社労士さんなのではないか。顧問契約を交わして以前から付き合いがあるのならば特に。

できるなら「私のクライアントは既に対応済みの会社が多いですね」と言ってほしい。

そしてさらに「今回の裁判で、一旦立ち止まって考える、いい機会となりましたね」などと言う。これも合わせ技一本で、まさに他人事の発言に聞こえました。

その他
「社員に○○させる」「従業員を使う」など。
あまりに人と会社に寄り添っていないのではないか。でも、こんな発言をする社労士さんが多い。
自社で働いてくれる従業員への感謝が薄い社長の言い回しに近い表現に、私は過剰反応しているのでしょうか。

さらに、分かりやすく例えるなら、誰でも会社に通勤するのにもかかわらず、非正規社員にだけ通勤手当が支払われないことに違和感を覚えないような感覚を持った人間を専門家として重用することの危うさです。

人の気持ちが分からない人物が、人に関わる制度構築や助言をすればどうなるのか。会社から従業員の心は離れるでしょう。それはモチベーション低下による生産性低下や離職者の増加に現れるかもしれません。

大企業では人事部(課)があったりするものですが、同じ会社の従業員に対して人事担当者が思いやりのかけらもない対応をすることから「ひとごと」と読み、他人事で薄情な様子への皮肉として表現したりしますが、我々、社会保険労務士は更に社外から意見する立場である以上、人に寄り添い、高い倫理観と誠意をもって、適切な言葉を選び伝える姿勢が、あるべき姿であると思います。

ハードルは高い。

もう一つ
社労士さんが「生産性向上が今後の課題ですね」と事もなげに言うのも、なんとも・・・。
社労士さんが人事労務制度をどれだけ整えたとしても、実際の利益への直接的な原因とまではなりません。
最後は会社に関わる皆さん全員の、主に従業員の頑張りです。
自立(自律)した従業員になり、創造性を発揮し、望ましい結果を生み出す努力をする。そんな風土を醸成してゆくこと。
望ましい結果を出すまでPDCAを高速で回し続けること。

さて、社労士さんでここまでコンサルティングできる、実行支援している者が何人いるのだろうか。社労士さんの仕事ではないのであれば、軽々しく「生産性を高めることですね」なんて言えないのではないか?社内に一歩深く踏み込まない姿勢ならばせめて「大変ですが頑張っていただきたい」の表現になるのではないか?

文字情報での発信ではなく、わざわざ動画配信しているからこそ、感情の込め方が伝わります。熱い男の代表例の松岡修造さんの熱さの10分の1でも込めて「頑張ってください」と伝える。

あまりに冷静で淡々と他人事の表現で話されると、現場の人間には切実な法令や判例をこね回して遊んでいるような血の通わないイメージが社会保険労務士に付いてしまうのではいか、そう感じます。

最後に
政府の中小企業への政策方針は「生産性の低い企業には倒産もしくはM&Aで買われることで、生産性の高い企業に人も財産も移し、国全体の経済力を高める」のだそうです。

つぶれそうな会社には早々に退場していただく方針なので、今後の経営において資金繰りを中心に甘い予測は禁物のようです。

お役に立ちましたか?今日はこのへんで。

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