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スマートシティは宝の山、中国IT大手が成果を競う

オリンピックや万博で盛り上げるのは話が小さい。中国ではスマートシティ(智慧城市)建設競争が勃発しているのだ。オリンピック村を数百、いや数千の単位で作るくらいの規模である。さまざまな業界が色めき立つのも無理はない。

■冷たい行政

私の上海生活はわりと順調だったが、ある冬に部屋の中の排水管が凍結して水が出なくなったことがある。この程度なら笑い話だが、冬に部屋の中が寒いのは上海ならでは。揚子江より北ではスチーム供給を行うので、部屋の中はポカポカ。上海よりも快適なのだ。しかし、それはそれでトラブルの元になるらしい。

私の知人は青島のマンションの12階に住んでいた。ある年の冬、7階の一室のスチーム菅にトラブルが起こったという。その場所を修理をしない限り、8階以上の部屋にスチームが届かないのだが、部屋の主である老婆はがんとして修理を拒む。8階以上の住民は凍えたが、熱供給公社は「我関せず」。行政も無関心。結局、8階以上の住民が修理代を分担して、ようやく解決。知人も5000円を供出したという。

とにかく、中国の行政は融通が利かない。トラブルに関わると疲れるし、下手すると責任問題になりかねないからだ。

本件は、住民が助け合って解決するのは中国らしいと思ったが、一方、管理規定はどうなっているのかとか、修繕費は積み立てられていなかったのかとか、さらには、老婆が拒否するのも一理あるなとか、いろいろと考えさせられるケースでもある。

いずれにしろ、スマートシティ構想の背景には、「住まい」に関する物理的・制度的な問題が多々ある。それらをスマートシティの名の元に一気に解決しようと、AI化が進みつつあるのだ。重責を担っているのは、BATを筆頭とする中国IT大手。地方政府と提携してスマートシティ建設を競っている。

■アリババの「シティブレイン」

昨年11月、同社グループの「シティブレイン(城市大脳)」が、国家AIプロジェクトに選定された。都市行政に関するすべてのデータをデジタル化しようという意欲的な試みだ。モデル都市はアリババの本拠地・杭州市で、すでに成果を上げている。

まずは危機管理。消防と救急、警察、水道、電力などデータを連動させ、素早く安全に消火できるようになった。火災が発生すると、城市大脳が自動的に最善策を提示し、交通をコントロールして消防車や救急車を迅速に到着させる。

さらに渋滞解消。杭州市の渋滞頻度ランキングは、2016年の全国5位から2018年には同57位にまで急降下した(改善した)。

■テンセントの「デジタルチャイナ」

テンセントは各地でスマートシティ建設をサポートする計画だ。

そこで、まず三大通信会社と合弁で「数字広東公司」を設立し、広東省の政府の中に500名からなるデジタル政府を設置した。こちらもすでに成果を上げつつある。

個人向け行政サービスでは、資料を電子化したり、虹彩個人認証を採用したりして、手続きを簡素化。企業向けサービスでは、香港・マカオのビジネスビザ発給を簡素化するなどして、ビジネス効率を向上させている。

■滴滴出行の「スマート交通ブレイン」

配車アプリ最大手の滴滴出行(Di Di)もスマートシティには熱心。交通部(国土交通省に相当)と共同で推進する「Di Di スマート交通ブレイン(滴滴智慧交通大脳)」がすでに20都市以上で採用されている。

これは、滴滴が持つ交通データを利用して渋滞を分析することにより、信号やロードサインなどシステム全体を最適化する取り組みだ。山東省済南市では、344カ所の交差点にスマート信号機を設置した結果、1年で1150万時間を節約し、交通の遅延を10~20%短縮できたという。

■まとめ

中国IT大手は、すでに市民生活を向上させつつある。住民に冷たく、非効率の極みだった地方行政が劇的に変わるのだ。対する日本は、お役所がとても優しいし、交通問題も深刻ではないので、スマートシティの有り難みがピンとこない。日本の関連企業は、社員を中国に交代で派遣して、それぞれ数ヶ月くらい住まわせて、ニーズを探ってみてはいかがだろうか。



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プラスチャイナCEO / 36Kr Japanを創業&CEO → 顧問 / 日経新聞と資本業務提携 / 10年中国滞在 / 上海で起業 / 日中SNS総フォロワー4万人+

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プラスチャイナCEO / 中国スタートアップ専門メディア 36Kr Japan 創業&CEO→顧問 / SNS総フォロワー4万 / YouTube中国ビジネス大学 https://www.youtube.com/channel/UCFktswbXx7wDNnGNkBtCwng

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