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大阪時評

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主に京都を中心に、2008年~2012年に渡って流通した『小劇場と京都をつなぐ、立ち止まるための観劇ガイドブック「とまる。」』に寄稿した、「大阪時評」全4回を転載したもの (やは…
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大阪時評④

「敢えて言おう、想定内であると」 昨年11月に行われた大阪市長選挙において、知事を辞職して出馬した橋下徹氏が圧勝した。  知事時代、財政再建の為文化予算の削減を宣言し実行した橋下氏に対する演劇人の反発は、少なくとも私の周辺では小さくない。加えて、ポスト精華小劇場としての役割も期待され、前回で取り上げたナレッジシアターもいつの間にか暗礁に乗り上げている(そもそもは前阪大総長・鷲田清一氏の任期満了退任による学内人事異動に始まり、大学・市の足並みが乱れ始めたのが発端とも言われ、実行

大阪時評③

「何度目の「はじまり」?」 棚からぼた餅とは正にこのことじゃないか、と最初はそう思った…2013年4月のオープンに向けて静かに、慌しく動き出している、ナレッジシアターと称される劇場のことである(http://www.kmo-jp.com/facilities/を参照)。しかし、劇場法成立の場合は大阪の中核的な劇場になることが想定され、また精華小劇場の閉館によってポスト精華としての役割まで付与されることとなったこの劇場は、私にとって突然天から降ってきたようなものであり、この思い

大阪時評②

「大阪のエンゲキが出来るまで。」 3/11以降も劇場は変わらず作品を上演し、私も多くの演劇を観た。いつものように開演間際に席に着き大量のチラシを手に取り、キャストに軽く目を通せば大抵3、4名の劇団員とほぼ同数以上の客演―今に始まったことではないが見慣れた光景だ。「劇団」の数は減っているのだろうか。確かに劇団「員」の数は特に若手になるほど少ないかもしれない。結局小演劇に関わるということは社会的機会を失うリスクと背中合わせだ。公演運営費や事務作業等諸々の負担を主に背負う劇団員は、

大阪時評①

「精華小劇場の閉館にまつわる考察」 大阪市初の公立劇場・精華小劇場(http://seikatheatre.net/)が3月末に閉館する。暫定10年計画で04年に開館したが一転、07年に財政難の市が売却の方針を定めていた。しかし、私たちはこの10年で幾つの劇場を失ったのだろうか?大阪小劇場のゼロ年代は「劇場が」失われた10年の側面も(が)大きいと言っても過言ではない筈だ。  思えばこのディケイドの基調をどこか決定付けたのは扇町ミュージアムスクエア(OMS)閉館と翌年の近鉄劇場