【長編小説】底辺JK vs 新米教師 #11
#11 かれんと田中
=主な登場人物=========
〇林 かれん:高校3年生。低学力と素行の悪さで底辺女子高に入学するも、優れた容姿と強気な性格、ずる賢さにより悪い意味で”高校の顔”とも呼ばれる存在になる。新しく担任となる新米教師田中を振り回すことに楽しみを見出す。
〇金村 乃々華:高校1年生。真面目な性格が、底辺女子高では逆に浮いている。
〇田中 拓海:新米教師。初の赴任先が地元で有名の底辺女子高となり、ハードな教師生活のスタートとなる。生徒に翻弄されながらも、理想の教師を目指し奮闘する。
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11-1 広まる
金村が教室に入ると、同じクラスの友達数人が寄ってきた。
「乃々華、昨日林先輩に連れ出されたんでしょ? どうだった?」
「カラオケとか行ったんだって? あんたにしては珍しいじゃん!」
その言葉に金村は驚き、少し焦った。
「えっ、なんでそれを……?」
「だって、林先輩がさっき話してたんだもん。『金村ちゃんが歌ったら意外と良かったよー』とか言ってたよ!」
友達たちは興味津々で金村を見つめていた。金村は照れくさそうに視線をそらしながら答えた。
「う、うん……ちょっとだけ歌いましたけど、そんなに大したことは……。」
すると別の友達がニヤリと笑いながら言った。
「林先輩がまた誘うって言ってたよ! 次も行くんでしょ?」
「えっ、それは……。」
金村は返事を濁した。林先輩の勢いに流されるのは避けたいが、断る勇気も簡単には湧いてこない。
かれんは3年C組で数人の友達と笑いながら、昨日の話をしていた。
「いやー、金村ちゃん可愛かったよ! 最初は全然歌おうとしなくてさ。でもちょっとずつ声出して、最後には結構ノリノリだったんだから!」
友達の1人が驚いた顔を見せる。
「えー、あの子が? いつも真面目そうな顔してるのにね!」
「でしょ? やっぱり人間って環境次第なんだよ。あたしがちょっと手をかければ、あの子だって変わるんだから。」
かれんは自信満々に言い切った。
11-2 田中の疑念
その日の昼休み、田中は職員室で美里先生と昼食を取っていた。ふと、昨日金村が伝えた「林先輩に絡まれている」という話を思い出す。
「……やっぱり、かれんが金村さんに何かしてるのかもしれません。」
田中がそう呟くと、美里は苦笑しながら答えた。
「林さんならやりかねませんね。でも、単なる嫌がらせってわけでもない気がしますけど。」
「えっ?」
「田中先生、林さんって、割と人に興味を持つタイプなんですよ。ただ、そのやり方が、普通じゃないだけで……。」
田中は少し納得しかけたが、まだ不安が拭えない。
「それでも、金村さんが困ってるのは確かですよね。もう少し様子を見た方がいいですかね……。」
「そうですね。でも、林さんが本当に何かをしようとしてるなら、そのうち何か変化が見えてくるかもしれませんよ。」
田中は心の中で複雑な気持ちを抱きながら、引き続き金村とかれんの動向を注意深く見守ることにした。
(この物語はフィクションです。実在する名前及び団体とは一切関係ありません。)