ケトルベルスイングを力学的に解説
最近、ハマっているケトルベル。指導していた選手の親戚(伊藤絃鋳工所)がケトルベルを国内で唯一生産しているということで早速購入してみました。
久々にケトルベルを本気でスイングしてみましたが、やっぱり体にズンとくる感じがいいですね。
バーベルやダンベルでは感じられない重みがあり、腕で錘をコントロールするだけの体の使い方も身につけられる。という点でコンタクトスポーツや格闘技の選手には特にオススメです。
ケトルベルの大きな特徴はグリップから離れたところにある鉄球。握った位置にプレートがあるダンベルと違って、グリップの先に錘があるのが特徴的です。
肩を支点、負荷がかかる部分を力点、支点から力点までの長さがモーメントアーム。
私の腕の長さが60cmでハンドルから錘までの長さが18cm。モーメントアームは1.3倍になるので、単純に考えると体にかかる負担も手でダンベルを持つトレーニングよりも1.3倍の負荷がかかるといえます。
(注)ここでは簡易的に腕の質量を0として話しを進めています。本来であれば腕と錘の質量を合成した中心部分にモーメントがかかりますし、角度変化に応じてモーメントアームの長さが変わるのでご注意ください。
また、ダンベルのようにグリップで固定するのではなくグリップの先からさらに振られる振り子の作用も働くので、それを制御するためのエネルギーも必要とされます。
モーメントアームが長くなることと振り子。これがケトルベルスイングの一つ目の特徴です。
ケトルベルスイングの特徴を最大限活かすには、エキセントリック収縮が起きるようにボトムでしっかりと体を固定すること。
勢いよく上に振り上げたところから重力と合わせて下りてくると、その勢いは相当なものです。それに対して体が折れ曲がらないようにハムストリングスとお尻と体幹でバチっと固めることで、強い反発力を得られることができます。
振り子の原理で、下に振り下ろしてくると水平方向に慣性が働きます。そのためボトムから切り返す時には大きなエネルギーが必要になります。
これは言うなればスプリントからの急激な切り返しの時と同じといえます。方向転換する際には体に働いている慣性に対して、しっかりと地面を踏まないと素早い切り返しを行うことができません。
体にかかる慣性に対抗するために、背面全体で瞬間的なエキセントリック収縮を起こすことが求められます。まさにその練習としてケトルベルスイングが最適だといえます。
ボトムから上に振り上げる時には、重心の移動がカギを握ります。ケトルベルの軌道をみると、前方への出力が必要になってきますね。そのためにするべきことは爆発的な股関節の伸展です。
クリーンやプライオメトリクスの指導で一番難しいポイントは股関節の伸展をしっかり意識させることかもしれません。そのためにもケトルベルを投げ出す感覚はヒントを掴みやすい印象があります。
しかもケトルベルの前後への移動に対して体がブレないようにするために、足底では細かい重心移動を制御する必要も。しっかりと足底で圧を感じて、地面からの反力を感じやすくなるという点も見逃せません。
ケトルベルスイングの大切なポイント
もう一度おさらいをすると、
モーメントアームが長くなることで負荷が大きくなる
振り子の作用を利用する
エキセントリック収縮を最大限活用する
股関節の爆発的な伸展
この辺を意識してケトルベルをコントロールすると、より適切な負荷を体にかけられるかなと思います。
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