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バイオメカニクスを学ぶことでわかること
バイオメカニクスというと、モーメントとかベクトルといった力学的な要素が入ってくるので拒否反応を示す方も多いように感じます。これまで10年以上バイオメカニクスの講義をしてきた中で、「物理は苦手だから」「論文とか難しくて」ということを何度も聞いてきました。
ただ、これってバイオメカニクスのほんの一部のことで、もっともっと大切な部分をおろそかにしてしまっているからなんですよね。そもそもバイオメカニクスをなんのために学ぶのか。ここが明確になっていないから、細かいところばかりに目がいってしまうのだと思います。
では、バイオメカニクスは何のために学ぶのか。極論を言ってしまえば、「重心コントロールのパターンを知る」ために学ぶというのが適切でしょう。
ベルンシュタインの自由度問題ではないですが、体は各関節の自由度の組み合わせでさまざまな動きを可能にしています。ということは、それぞれの関節をどうやって制御するのか。これが課題になります。
この途中の動きを規定してしまうと、もしどこかで少しのズレが出てしまうと最終的な動きのズレを修正しようとした時に徐々にズレが大きくなってしまいます。
まずはその最終地点はどこになるのか。そこに向かうためには、どんな経路があるのか。その経路は必ずしも一つではなく外乱が入った時にでも対応できるようになっていることが望ましいでしょう。動きの再現性は必要だけど、それはあくまで最終地点の再現性であって途中の経路の再現性というわけではないということ。
バイメカを学ぶと、どうしても「正しい動きとは」「効率的に動くためには」といった話しになりがちです。それは確かにそうなんですが、まずはもっと大きい部分を見逃さないようにすることのほうが大切です。
結局のところ、私たちが静止するためにも移動するためにも移動して止まるためにも、重心をどのようにコントロールするかが鍵を握ります。そのように考えた時に、まずは重心の定義を明確にしておくこと。そして、重心はどうやったら動かすことができるのか、という共通認識を持つこと。
重心をコントロールするためにどんな方法があるのか。それが加重であったり抜重であったり、ベクトルの方向であったり、関節の回転運動であったり。その前提としてニュートン力学がありますよ、という流れができてきます。
この重心のコントロールをすっ飛ばして、いきなりベクトルとかモーメントとか、ニュートン力学から入ってしまうから物理への拒否反応が出てしまうな、と思います。
特に細かいところがわかってくるとどんどん細かいところに目がいきがちで、大きい部分を見逃しがちです。確かに細かいところは大切なんですよ。大切なんですけど、まずは大きい部分を見ておかないと全体の連鎖などに気づきにくくなりやすいです。
バイオメカニクスは運動学(kinematics)と運動力学(kinetics)の組み合わせです。が、運動学とひとことに言っても、kinematicsだけでなく関節運動学のkinesiologyもあればドイツ運動学のBewegungslehreもある。なんとなくkinesiologyばかりに目がいって全体のkinematicsを見逃しがちだし、もっと感覚的な部分や外乱に対しての反応を見るBewegungslehreも理解しておかないと動きってわからないな、と今になってようやくわかってきました。
どこまでをバイオメカニクスとして捉えるか、ですよね。正直難しい定義かもしれませんが、この辺を一緒に学んでいきましょう。
9月2日から3ヶ月集中講座を行います。Biomechanics for Real Life。頭でっかちになりがちなバイオメカニクスを実生活にどのように活かしていくのか。この辺りを解説していきます。
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