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2023年の国内保険DX・Insurtechにおける注目トレンド

Finatextグループで保険事業を推進している河端です。

私はこの2年弱、「国内外の保険DX・Insurtechに関して情報収集をし、1日1つ以上発信すること」を自分ルールにしています。いつもは気になったトピックを自由気ままにツイートしているだけなのですが、この年末年始の時間を利用して、最近のホットトピックを振り返りつつ、2023年に注目していきたいトレンドについて簡単に整理したので、Insurtechに少しでも興味がある方のご参考になればと思い、公開してみます。

ここでは3つのトレンドをご紹介します。1つ目が根底に流れる大きなトレンドで、残り2つはその上にある少し具体的なトレンドです。

1.新ステージ「2.0」へ(Insurtech 2.0 / Embedded Insurance 2.0)

2022年から、「Insurtech 2.0」「Embedded Insurance 2.0」など、新たなステージへの突入を示すような「2.0」というワードが広く使われ始めました。それぞれについての私の理解は以下のようなものです。

Insurtech 2.0:
巨大な既存保険市場のdisruptを志向したInsurtech1.0に限界が見え始め、techを活用して既存保険市場の課題解決を志向するようになった。それに伴い、「Insurtech」と呼ばれる新興・tech系プレーヤーと従来の保険会社との関係も、競合から協業へと移行している
参考

Embedded Insurance 2.0:
これまで組み込み型保険はシンプルな単一商品だけを提供していたが、これからは多様な選択肢からカスタマイズされたソリューションを提供するようになっていく
参考

いずれも、保険の本来の価値をより広く社会に届けて行こうとする動きであり、私もこれが今後の保険DX・Insurtechのベースになっていくのではないかと考えています。

このトレンドの中で、今後は、

  • 既存の大手プレーヤー(保険会社や代理店など)が新しいテクノロジーをどのように取り入れていくのか?

  • そのために既存の大手プレーヤー(保険会社や代理店など)がInsurtechとどう連携していくのか?

  • また、既存の大手プレーヤー(保険会社や代理店など)がデジタルプラットフォーマーやサービサーとどう連携していくのか?

に注目していきたいと思っています。


続いて、「Insurtech2.0」と「embedded insurance 2.0」、それぞれの文脈で注目したいトレンドを1つずつ挙げたいと思います。

2. 顧客接点において「ヒト」の力を活かすInsurtech

まず、Insurtech2.0の文脈で注目したいトレンドです。
これまでは「デジタルを活用した顧客体験」というと、暗黙のうちに「フルデジタルでの顧客体験」が想起され、「デジタルかヒトか」という二項対立の議論も多く見受けられました。
しかし、Insurtech 2.0の要諦である「既存保険市場の課題解決」のスタンスで、改めてお客様の立場やカスタマージャーニーを中心に考えたときに、「フルデジタル」にこだわらずに「うまくいいとこ取りしたらいいじゃん」という発想が広がり始めているように思います。

これまでは「フルデジタルでもお客様に理解・納得してもらいやすくするために、保険商品自体をシンプルにしよう」という議論がありました。これはこれで間違ってはいないものの、保険という商材そのものの価値を最大限届けようとすると、商品が複雑になることもあります。そんな複雑な商品へのお客様の理解や納得を作るためには、やはり「ヒト」のサポートが有効に機能することが多くあるようです。

そこで、「デジタルかヒトか」ではなく、デジタルとヒトの最適なミックスを探すのが、これからの大きなチャレンジになります。

例えば、保険契約までのプロセスを例に考えてみます。

<契約プロセスでのデジタルとヒトの役割分担・連携の例>
最初はヒトがリスク情報を提供しつつ不安に寄り添う

その後はデジタル+ヒトで具体的な契約内容の検討をサポート

契約申込手続きは、デジタルで実施

このように、プロセスごとにデジタルとヒトの役割分担・連携の仕方は変わるはずです。またこのミックスは、顧客やその時に契約しようとしている保険によっても変わるはずです。

その際、デジタルでできること・できないことを正しく見極め、デジタルとヒトとの分担・連携の仕方の最適解を模索・構築していく必要があります。「デジタルかヒトか」という二項対立を越えて、「ヒト×デジタル」の新たなソリューションが登場することを期待しています。またこの切り口で、これまでヒトによる販売を重視してきた生命保険や保険代理店による、デジタルを活用した新たな顧客体験構築のチャレンジが進むことにも期待しています。

3. 保険とデジタルサービスの接続のハブになるInsurance Exchange

最後に、Embedded Insurance2.0の文脈で注目したいトレンドです。
2022年11月の東京海上ホールディングスとbolttechの資本業務提携のニュースがありましたが、このニュースをきっかけに「Insurance Exchange」という構想を知った方もいるのではないでしょうか。

「Insurance Exchange」とは、言い換えるならば「デジタル上の保険マーケットプレイス」です。InsTechのレポートでは「保険の買い手のコミュニティが、保険の売り手のコミュニティとデジタルプロセスや能力を共有できる枠組みを提供する技術または技術群」(筆者訳)と定義されています。Embedded Insuranceの観点から補足すると、自社サービスに保険を組み込んでユーザーに保険を販売/提供したいプレーヤーと、そこに保険を提供したい保険会社の、マッチングと接続を最適化するための仕組みです。

保険は「サービスと保険会社が提携を決めたら、すぐにEmbedして販売開始できる」という商材ではありません
システム連携はもちろんのこと、その前提として販売商品の整理や、保険会社側での保険契約の処理方法の整理等が必要になり、場合によっては販売開始までの準備に1年以上かかることも珍しくありません。
そこで、このような事前準備を予め済ませておき、「すぐにEmbedして販売開始できる」状態に近づくためのハブとしてInsurance Exchangeが有効に機能するのではないかと考えています。

日本においては、「Insurance Exchange」という言葉自体がどこまで浸透するかはわかりませんが、Insurance Exchangeの機能(=保険の需要側と供給側の複数プレーヤーが接続された仕組み)自体は今後拡大していくのではないかと推測しています。
ここで取引される保険商品は、まずは損保系の低単価な個人向け商品が中心になるかと思いますが、先々はより高単価な商品や医療や生命保険、また法人向け商品にも広がっていくことを期待しています。

さいごに

FinatextグループもInsurtechプレーヤーの一員として、ここで書いたようなトレンドを後押しし、保険が社会により大きな価値を届けていく一助になっていきたいと考えています。
これを一緒に実現していく仲間を随時募集していますので、ぜひお気軽にご連絡ください!
また、Finatextグループとの協業に関心のある事業者様からのご連絡もお待ちしております!

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