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SES企業と雇用調整助成金

雇用調整助成金が12月までに延長された。


SES企業は苦境に立たされている。新型コロナウイルス感染症の影響で多くのプロジェクトで人員が削減されている。

開発系のプロジェクトは延伸また中断。続行するプロジェクトも最大で3ヶ月ほどの遅れが発生しているというのが私の周辺で起きている状況だ。

それでもインフラ案件は数が多かったが、10月以降の20年度下期にかけて、スタートする大規模案件は数が非常に少ない状況だ。エンドユーザ側でのスタートが切られないため、各ベンダーはプロジェクト数の現象に悲鳴を上げている。

煽りを食らうのはSES会社だ。4月入社の新卒がいまだ現場業務に入れていない、などという状況もある。

他社に業務を依存している事業形態がここにきて本格的な歪みを招いている。下期にかけて多くのパートナー企業が同様な状況に苦しんでいることを、耳にする機会が多くなった。

そんな中、9月末までとしていた雇用調整助成金の期限が12月末までに延長した。これによって助かっていた企業は数が多い。

一定の条件下で休業を免れるための臨時の調整措置であり、この制度によって延命していたSES企業も数多くある。

ここで気づかなければならないポイントは、あくまで延命措置であるという事である。

SESという事業形態を完全に否定するわけではない。むしろ、エンジニア初学者に高確率で技術的な現場経験を積ませることのできる業態として、日本のエンジニア業界全体へ多く貢献する市場だ。

しかし、このコロナ禍において露呈したのが、あくまで他社依存の事業だったという事実だ。

プロジェクトが停滞し、発注元に案件がなければ、SES会社へ発注のしようがない。自社へお帰りください、と、契約期間終了とともに告げられる。

いかに優秀な人材であろうとも、発注元の企業にも自社の社員を抱えているという事情がある。自社の社員と他社の社員。この天秤はどちらに傾くかは自明だ。

世界的恐慌によって経済危機に陥った場合に、人情で、よしみで契約するといった甘い判断をする経営者はそれこそ自社社員を路頭に迷わせるだろう。

冷静かつ冷徹に、契約という免罪符を振りかざし、お世話になったパートナー会社の社員へは一時の別れを言い渡す状況が相次いでいる。

これは全くの正解で、互いに経済的な無理をして関係性を維持することは、共倒れになる危険すらあるナンセンスな行為だ。

プロジェクトにアサイン出来ない状況であれば、発注しない。これは徹底したほうが良い。

結果、単純にSES会社は売り上げが大幅に減少する。営業を継続するために、エンジニアの売り込み活動は非常に重要な行動となるが、ないものをつついても何も出てこない。

空の財布をいくら振っても、一円も出てこないのだ。

なるほどそれであればと、雇用調整助成金に助けを求める状況が、今のSES会社の大変であるようである。

そして、この状況に経営者は深く思考しなければならない。

経営を他社依存であったことをまずは受け止め、SESに終始してしまったこの状況に何をか思うべきなのである。

雇用調整助成金がなければ倒産の危機であったことを、時代のせいにするのか、経営者のせいにするのか。

この自明な問いに答えを出しているかを見ている社員が多いことにも気づいておくべきであろうと思う。

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