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自己実現のための欲求投資論

自己中心的に物事を捉えた方が幸せなのだろうか、と後輩さんからお悩み相談を頂いた。

一理あるなと思った。今日はそのテーマで深掘りしてみようと思う。これはマズローの5段階欲求説の高次な欲求に位置する「尊厳欲求」と「自己実現欲求」に関する内容だ。

自己実現自体は手法であるが、自己実現そのものが欲求でもある。これは、他者に認められたいとする尊厳欲求の上位に位置するとされ、今回はこの二つに関わる内容だ。

尊厳を得るため、または十分な自己実現を可能とするにあたって、他人とのコミュニケーションの思考は大きく分けて3通りあると考える。

・自己中心的に自己実現する
・他者と自己の思考をミックスして自己実現する
・他人思考型であり自己実現は結果に終始する

3段階と言っても良いかと思うが、答えは一択だ。二番目の「他者と自己の思考をミックスして自己実現する」であることは疑う余地もない。

自己中心的に自己実現する

自己中心的な方が、手っ取り早く幸せになれることは間違い無いだろう。他人の思考で自身の精神を汚濁しないので、非常に安定した精神を持てて、楽である。

ただし、維持が難しいし、しっぺ返しが来る。

維持と言う観点では、どうしても他人の思考を想像しなければ仕事が成り立たないし、出来ないので、完全に他人の思考を日常生活で忘れ去ることができない。ふとした瞬間に他者とのぶつかり合いが生じ、逆にストレスとなり、しっぺ返しが来ることになる。

短期的には自己中心的でいられた方が楽なのかもしれないが、長期的には大きなデメリットがある。何より、自己中心的な考えで周囲と接することで、周囲の人間は離れていくだろうからだ。

つまり、自己実現云々にたどり着く前の段階で、尊厳欲求を満たすことができない。他人に多く承認されないリスクがあるということだ。

自分の資産を必要以上に減らしてしまう行為ともいえるので、注意しよう。


他者と自己の思考をミックスして自己実現する

正攻法と言うか、これしか無いという方法なのが2点目、他者がどういった欲求があるのか、それを満たすにはどうすれば良いかを自己実現に取り入れるという方法。

同時に自己の欲求も満たされなければならない(これは自己実現の本質でもある)が、長期的に見てプラスになるのならば、多少の自己欲求は抑制する。

つまり他者の欲求を満たすために自己の欲求を投資する考えだ。我慢をする、一時的な感情的な損をする、ということは長期的に考えて、先々その返礼が相手から返ってくる。

誰でも無限に湧いてくる、人間なら等しく持つリソースである欲求を、他者に投資するのである。

それは、金額にして等しく全額返ってくるわけではない。相手に多く与えて、少し戻ってくる。その少し戻ってくるものが、他者と分かち合える大きな幸せなのではないだろうか。

「困ったときはお互い様、あの時こちらの要求を呑んでくれたよね」という返報性の原理に従いお返しをくれたとき、「やってたことは無駄じゃなかったなぁ」と私なんかは思うのだ。

他人を思い遣った上で自己実現することで、自己中心的な行いで得られるよりも、他者と分かち合える、「深く、広い幸せ」が訪れると考えている。


他人思考型であり自己実現は結果に終始する

2点目の自己の欲求を他者に投資しすぎると、行きすぎて他人思考型人間になってしまう。これが、最も不幸になるパターンだ。

アドラー心理学でいう「他人の人生を生きる」という状態を指し、他者の欲求を満たすため、または他者に負の感情を抱かせないために、自己実現の範囲を狭めてしまうように行動することだ。

例えば、上司や部下の顔色を伺って言いたいことを言わなかったり、誰かに批判されるかもしれないと新しいことに挑戦しなかったり、行動を抑制してしまうような状態だ。

結果、他人を気にしながらこなした作業やコミュニケーションが自分の自己実現の結果となってしまい、自己実現欲求が満たされにくいのだ。

欲求の投資は、将来的な配当が得られるように投資しなければならない。圧倒的に投資したが、全て自分の気持ちと相反するものだったなんてことになると、自己実現欲求を満たさない。

ひとつの考え方としては、万人に受け入れられる人物になることは出来ないと考えることだ。自分を完全に理解してもらう必要もないし、それは押しつけになってしまう。

ここで重要なのは、二つであると考えている。

・人はもれなく全員、価値観に相違があると認識すること
・相手が自分を受け入れなくても構わないという前提を敷くこと(逆も然り)

この二つを明確に認識することで必要以上に他者を忖度しない行動理念となる。人は、人に嫌われることや後ろ指差されることに恐怖を感じる感覚が根底にあるものだが、客観的事実を根拠とし、嫌われる勇気を持って、相対することをお勧めしたい。

自分らしく自己実現することが、幸せへの近道だと思うし、それは結果的に人を呼び寄せ、周りの人をも幸せにすると信じている。

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