この景色、巨匠が絵にしたら/実験7
前回はスカに終わってしまい、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。前回も書きましたが、現代で主流のノッペリした無機的なビルは、私が知っている絵画の巨匠たちには馴染みのないものなので、うまく絵にできないようです。そこで、今回は、同じ都市の景観でも、ビルの谷間の憩いの空間的な風景をAi巨匠に絵にしてもらいます。
前回はこちら:
ところで、前回までは異なる画家と異なる画像生成Aiを同時に比較していました。画像生成Ai間の違いが見られて面白かったのですが、記事がややゴチャゴチャしてくる感じがあったので、今回から、1回の投稿ではひとつの画像生成Ai だけを取り上げることにします。今回はSDXLだけを用いて実験し、次回の投稿で、同じ写真についてLenardoAiで実験してみます。
1.ホテル・エントランス
まずは、こちらのホテル・エントランスから。ビルの側面につつましく寄り添うように作りつけられたこのエントランス。奥行き感のある階段を上った先にロビーがあるのとあわせて、都心の隠れ家的な雰囲気を醸し出していて、なかなか洒落ていると思いました。
このエントランスをまず Aiルノワール に描いてもらいます。「ルノワールというと人物画」という印象がありますが、都市の風景も描いていて、それはそれでなかなか味があります。
条件設定は、次の通りです。
※Prompt = Pierre-Auguste Renoir
※Negative Prompt なし
※Style 指定なし
※Strength[元写真による縛りの強さ]
= 0.5( 0~1.0幅 )中程度
※Prompt Guidance[Promptによる縛りの強さ]
= 18( 0~35幅 )中程度
Quality & Details[出来上がりの質]
= 25 ( 0~50 幅 ) 中程度
※CLIP Preset = Default
※Sampler = Default
さて、どうなるでしょう?
あれ、写真とほとんど変わらないですね。緑が増えて隠れ家的な雰囲気が少し増したくらいでしょうか?
では、建物系定番の Aiユトリロにお願いしてみます。Promptを Maurice Utriilo に変えるだけで、後の条件はルノワールのときと同じでいきます。
あれ、Aiルノワールよりも、さらに元写真寄りになりました。
うーん...…自分の写真を自慢するわけではありませんが、かなり絵画的な構図の写真なので、写真縛り0.5だと Ai巨匠が腕をふるう余地がないのかもしれません。
ユトリロで写真縛りを0.3に緩めてみます。さて、どうなるでしょう?
おぅ、絵画っぽくなりました。ですが、「これを描いてもらうなら、別に元写真がなくてもいいじゃん」という仕上がりのような気もしないではありません。
もっとも、promptだけでこの絵にたどり着けるかというと、まずできそうにないので、その意味では、写真からの変換に意味があった(どういう意味が?)と思います。
2.丸窓のある風景
次も、ビルの間のほっとくつろげる風景。歩道に面した丸窓です。
この風景も、まず Aiルノワールに絵にしてもらいます。
おっ!丸窓に映り込んでいた風景を高島屋の赤いのれんに的を絞って花にしてきました。なるほど……です。壁面の感じとか、気に入りました。ですが、手前の自動車は写真のまんまです。
では、Aiユトリロにも描いてもらいましょう。
おぅ...…こちらは、丸窓に映り込んだ風景を丸窓の向こうに広がる街並みに変えてきました。構図的にちょっと無理がある感じもします。手前の自動車は、ここでも、ほぼ写真のままです。
自動車が写真のままなのは、ルノワールとユトリロの存命中にこんなデザインの乗り物がなかったからだと思います。Aiは、現代でも見ることのできる巨匠の作品からその画風を学習しているはずです。裏返して言うと、巨匠が作品にしなかった対象物を巨匠がどのように描くかは学んでいない――というより、原理的に学習できない――のではないでしょうか?
3.ガストのある風景
よそ行きの雰囲気が強い都心に日常の生活空間にあるのと同じものを見つけると、何かほっとします。私にとって、暮しているマンションの隣にあり家族で利用するガストは日常空間を代表するお店です。そこで、都心で見つけたガストのある風景を Ai巨匠に絵にしてもらいます。
うーん...…これは元写真の構図がよくなかったのですが、2階から4階部分のガラス張り壁面の比重が大きすぎてボヤっとした感じになってしまいました。
Aiユトリロにも同じ写真でお願いしてみます。
2階から4階部分のガラスに向かい側の街並みが映りこんでいるイメージですね。こちらの方が、ルノワール版よりキレがあると思います。
こガラス張りの壁面も、さきほどの自動車と同じで、巨匠たちの存命中にはなかった対象物だと思います。ですから、Ai巨匠が処理に苦しむのでしょう。それでも、窓という対象物は巨匠たちの時代にもあったので、窓への映り込みの延長でガラス張り壁面を処理したと考えられます。その点、自動車よりは上手に絵画化できていると思います。
どうやら、SDXLでAi巨匠に腕をふるってもらうためには、巨匠の作品に登場していた対象物をモチーフにする必要がありそうです。次回はLeonardo.Aiで同じ写真を絵画にしてみますが、これはAiの機械学習の本質にかかわる事柄なので、あまり違った結果にはならないような気がしています。
絵画らしさがよく現れた「1. ホテル・エントランス/SDXL/ユトリロ/写真縛り0.3」をトップ画像に使って、この投稿を締めくくりたいと思います。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。次回も引き続きよろしくお願いいたします。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?