幸せな送迎
しばらくぶりに、姉が帰省していた。
たった二日間であったが、滅多に会う機会のない現況であるので、できるだけ一緒にいる時間を持ちたいと思って過ごしていた。
姉は高校時代の仲間との会合があり、帰省することになった。当日、私は姉を車で会場まで送り、そして帰りも迎えに出向いた。姉のために、それも遊興の一席に出向くという機会での送迎というのが、私はとても嬉しかった。
4つ年上の姉は、大学を卒業後、僅かな期間のOL生活を経て結婚し、以後今日まで専業主婦の家庭人として人生をあゆんできた。
予々、私が今度旅行等で何処そこに行く等の話をする際に、とても羨ましいというような返事を寄越しては、何処かもどかしさを滲ませていた姉をこれまで見てきていた。
だから、今こうして家庭から離れ、ひとりの女性となり、自由時間の中で夜の街に出向いていく姉を見るのが、私は嬉しいのだ。
ただ決して、姉の日常を不幸だとは思ってはいない。その日常は、姉が選んだ道であるのだから。そして姉は、私が獲得できない世界をいくつも知っている。私は、そのことをよく知っているつもりだ。
迎えの場所に到着している事をスマホのメールで伝えても、一向に店内から出てこない姉。
それを待ちながら夜の街を眺めている時間。いいじゃないか、幸せなものだ。
いつまでも待ってあげる。
この世でたったひとりの、あなたのために。
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