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ここにいます

「今ここにいます」
 LINEにそんなメッセージと画像が受信されていた。画像は、スペインの「セビリア大聖堂」のようである。
 メッセージの主は、20〜30代の頃にパートナーであった人。今は実際に会う機会はないが、本人がスペインに渡った時にのみ、このような画像メッセージが送られてくるようになった。
 当時のパートナーは、20代の頃よりスペインに長期滞在する機会を得ることになった。(この人の職業を公表すれば、その滞在理由は誰しもが頷けるもの)
 自分が29歳の頃、「20代の自分へご褒美」として、約10日間の休暇を頂き、スペイン行の旅客機にひとり飛び乗り、初めてスペインを旅する時間を作ったことがあった。ご褒美旅行は、いわば次の年代に入っていくためのパスポートのようなもの。「お前、20代頑張ったな!30代のステージに上がっていいぞ」
 そのような儀として捉えられるものだ。
 そして数年前に50代のステージに上がることになった自分は、新しいパスポートを発行することが叶わずにいた。
「お前、40代にやらなければならなかった事、まだ残してるよな」
 そんな己の心の声に、逆らうことはできなかった。
 あの時、取り逃がしたパスポートは、今後59歳の後半に差し掛かった時に、2つの年代分のまとめ発行の手続きができるようにしなければならない。
 スペインから届いたLINEメッセージ。その中には、自分に対するそのような教えが込められていた。

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