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【Kim13】(2) え,語彙力って伸ばせないの?

前回の続きです。Kimらの2013論文では,語彙力だけ読書介入効果がない,という結果になってしまった,という話でした。


え,伸ばせないの?

私たち教育心理学者は,関心のあるテーマについて,調査をしたり,実験をしたりします。その最終目標の1つは「より良い介入プログラムの開発」だったりします。

介入研究の結果というのは,ある意味,これまでの調査や実験といった基礎的な研究の答え合わせ的な部分があるのです。答え合わせの結果が「不正解」なのであれば,少々心穏やかではありません。

しかし研究というのは,常に完璧ではありません。「効果なし」という結果が出た場合であっても,「~だから効果が出なかった」という考察(言い訳。格好よく「エクスキューズする」ということも)は,多くの場合可能であり,それが次の研究につながったりもします。

この場合も,「文章問題を解いたり,正確・スピーディに音読することには『コツ』があるが,語彙力には『コツ』がないから,短期間では高まりにくいんだ」とか,あれこれ理由を考えていました。

伸ばせないことはない,か……?

とはいえ「『伸ばせない』というのもおかしな話だな……」とは思っていました。上記の考察は,読解力や読みの流暢性よりも,語彙力への介入効果が小さくなる理由にはなっても,「効果なし」という結果になる理由にはならない気がしていたのです。

(まぁ,有意でないというだけで,効果量自体は0.04という正の値だったのですから,矛盾しているとまでは言えないのですが)

某原稿のために調べものをしている途中で,Cervettiらの2023年のメタ分析論文を見つけました。

Cervetti, G. N., Fitzgerald, M. S., Hiebert, E. H., & Hebert, M. (2023). Meta-analysis examining the impact of vocabulary instruction on vocabulary knowledge and skill. Reading Psychology, 44(6), 672-709.

この論文では,一部の介入方法によって,一部の語彙力には介入効果があった,と述べています。

……微妙な書き方ですよね。実際,微妙な結果なのです(笑)

読書介入そのものというわけでもないし,介入法がちょっと複雑なので,記事を改めて説明したいと思います。

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最後まで読んでくださり,ありがとうございました。


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