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【Kim13】(1) 読書介入のメタ分析論文

ある論文を読んで,衝撃を受けたことがあります。それは2013年のKimらの論文です。

Kim, J. S., & Quinn, D. M. (2013). The Effects of Summer Reading on Low-Income Children's Literacy Achievement From Kindergarten to Grade 8: A Meta-Analysis of Classroom and Home Interventions. Review of Educational Research, 83(3), 386-431.


どんな内容の論文だったのか

この論文では,夏休みに「読書介入」を行うことが,ことばの力にどういった影響を与えるかをメタ分析しています。

メタ分析というのは,同じテーマについて研究している論文をたくさん集めて,分析し直すことで,より確かな結論を導こうとするアプローチです。この論文では,幼稚園~中学2年生までの児童・生徒を対象とした41研究が対象となっています。

読書介入とは,読書を通して子どもの言葉の力を高めようとする試みのことです。「介入」とあることからも分かる通り,「元々はする予定は無かったんだけど,割り込んで入れました」というニュアンスがあります。学校で行う国語授業の補習のようなスタイルのものもあれば,夏休み期間中に家に本が定期的に送られてきて,家族で一緒に音読の練習をしたり,一人でそれらの本を読んだりしてね,という介入方法もあります。

この後者の代表例が,前回まで3回に渡って説明してきたKimらの2006年論文です。

さてそのメタ分析の結果なのですが……なんと,語彙力だけ介入の効果なし,というものでした。

以下,論文のTable 3に基づく効果量(読書介入の効果の大きさ)のリストです。

◎総合 0.10*
◎文章理解(全体) 0.13*
◎文章理解(文章題のみ) 0.23*
◎読みの流暢性とデコーディング 0.24*
◎語彙 0.04

総合とは,文章理解(全体)と語彙を両方含めたもののことです。

文章理解(全体)とは,国語のテストのように,文章題だけでなく,漢字の読みや語彙,文法の問題などを含めた文章理解力テストのことです。

文章理解(文章題のみ)とは,文章理解(全体)から文章題だけを抜き出したものです。

読みの流暢性は「文章を正確かつスピーディに音読する力」で,長い文章を一定時間内に音読させて,その正確さや読めた量を指標とします。

デコーディングは「文字を音に変換する能力」で,人工的な無意味語で測定したりするものです。

語彙力は正確には「語彙の広さ」に当たるもので,選択肢の中から正しい定義を選ぶ形式のものです。

最後に,アスタリスク(*)がついているのは「統計学的に有意な効果があった」という意味で,一応「効果がある」と考えても良さそうなもののことです。ご覧のとおり,「語彙力」だけ有意ではありません。あわわ。

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続きます。

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