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ガーシー議員はオンラインで国会出席してはいけないのか

最近、ガーシー議員が、日本の国会の出席義務に違反し、陳謝を求められ、また、場合によっては除名されそうだという報道がありました。

そこで今回は、ガーシー議員が日本のどんな法律に違反しているのか、ガーシー議員はオンライン出席してはいけないのか、について調べてみました。
(何度書いても面白い響きですね「ガーシー議員」って。)

憲法と国会法

まず、憲法には、次のような定めがあります。

日本国憲法56条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決 することができない。

このように、憲法には、3分の1以上の国会議員が「出席」しなければ開くことができない、という定めのあり、さらには国会法には、次のような定めがあります。

国会法5条
議員は、召集詔書に指定された期日に、各議院に集会しなければならない。

そしてガーシー議員は、このような「議院の召集に応じて国会に出席する義務」に違反しているということになります。

オンライン出席じゃダメなの?

ガーシー議員は、現在、国外におり、帰国をためらっているため、国会には物理的に出席ができないようです。

そこで、オンライン出席ではダメなのでしょうか。衆議院規則においては、「出席」に関して以下のような規定が置かれています。

衆議院規則148条
表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。

この定めから明らかなように、これまで国会の実務は「物理的に出席していることが必要」との考え方に立っていました。
「出席」とは、実際に国会に行くことを意味していたのです。

そのため、国会へのオンライン出席を可能とする法的根拠は、何もない状況です。
したがって、議院規則等が改正されない限り、オンライン出席ではだめだということになります。

また、そもそも国会へのオンライン出席は、憲法上、可能なのかという問題もあります。
憲法は最上位の法なので、憲法が許容しないのであれば、議院規則を改正しても、オンライン出席はダメということになります。

実は、2022年の2月ころ、このオンライン出席が可能かという点について、国会の憲法審査会で議論がなされました。

コロナ禍でも物理的に国会出席

オンライン出席か、物理的出席か、という点について、コロナ禍ではどうだったのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症のまん延に際し、国会に全ての議員が参集することによって、更なる感染拡大の危険がありました。
そこで密集を避ける方策が検討されましたが、それには、既に登場した、この憲法の定めに違反しないよう、配慮がされてきました。

日本国憲法第56条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決 することができない。

その結果、この3分の1以上の出席、つまり「3分の1は議場にいる」という状況を満たしつつ、本会議に出席する議員を入れ替えることは可能であるとして、議場への出席者調整がなされることがありました(ただし採決だけは、全員出席。)。

このような苦肉の策は、「3分の1は現場にいなければならない」「憲法がいう出席とは、物理的に出席していることを意味している」という前提に立っているといえます。

そうなると、オンライン出席も憲法上、難しそうです。

オンライン出席と憲法

しかし今年の2月ころから、国会へのオンライン出席は憲法上、本当に不可能なのか、という点について、国会の憲法審査会で議論がなされました。

憲法審査会の会議日誌・会議資料は公開されています。興味があれば、見ることもできます。

憲法学者の間でも、憲法が「物理的」な出席を求めているという考え方と、「機能的」な出席でよく、オンラインでも可能であるという考え方の双方で見解が分かれていました。

そのような中で、憲法審査会は、
「憲法第56条第1項の『出席』は、原則的には物理的な出席と解するべき」
「ただし国会の機能を維持するため、緊急事態が発生した場合等においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、その機能に着目して、例外的にいわゆる『オンラインによる出席』も含まれる」
という結論に至りました。

つまり、普段はダメだけど、緊急事態にのみ、オンライン開催も憲法が許容する、という考えになります。

まとめ

今後、緊急事態下における国会へのオンライン出席ができるよう、法的な手当てがなされる可能性があります。

しかし、普段からオンライン出席は憲法が許さないということですので、たまたまそのような緊急事態が生じない限り、ガーシー議員がオンライン出席で出席義務を果たす、というのは、今後も難しそうです。

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