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びっくりのインド ● 44 ● Good-bye インド!

インド旅立ちの日、夜中のフライトだったから夕方までは普通に過ごした。

朝一番にやりたかったのは、毎日部屋を掃除してくれた女性にチップを渡すことだ。
「朝の掃除にチップをあげる必要はありません」 とスタッフに言われてたのだが、「出発の日は彼女にお礼をしてチップを渡したい」 と相談すると、「驚くと思いますが喜ぶでしょう」 というので、最後の掃除の後にスタッフから彼女にヒンディーの言葉で説明してもらい、500 ルピ (≒ 1,100~1,200円) を渡した。
彼女は恥ずかしそうに "Thank you" らしきことを言って、目を合わせず逃げるように帰っていった。

午前中は市場へ行き、私が 『 中に何も入ってないパンを買う 』 ことを覚えてくれたパン屋のお兄さんと、幼児の頭くらいの大きさのパパイヤを毎日買った屋台の果物屋の人に、遠くから 「お世話になりました」 と無言の挨拶をして、ほとんどの平日に食事したレストランでランチを食べた。

あとは夜まで部屋でのんびり過ごした。

毎日ナッツやリンゴをあげていたリスは明日も来て、部屋に誰もいないと何を思うだろう。
同僚は 「惠白さんがいなかったら食べ物がもらえなくて悲しみますよ」 と言っていた。
いや、野生のリスだから、これからも逞しく生きていくはずだ。

そして夜になった。
金色の服を着てみたら案外まんざらでもなく、鏡の中の自分がインド人っぽくて笑ってしまった。
スーツケースを持って 1 階に下りて THE 金の服 をお披露目したら、「ほら、とても似合ってます!」 と同僚が褒めてくれた。

彼には滞在中ずっとお世話になった。
丁寧にお礼をして、手配してくれた車に乗った。
インド初日、ホテルから軽トラで迎えが来て、スーツケースを荷台に放り込まれ、でこぼこの道でダダダタッと揺れる助手席で珍しく車酔いしそうになりながら 「このまま何処かへ連れ去られて... 金を取られて... 下手すると殺されて... 」 と不安になりながら見たのと同じ景色を、冷房の効いたハイヤーの中から眺めた。
空を見ると月が出ていて、しばらくのあいだ車についてきた。

いよいよ。
空港に到着。
私がチェックインしたカウンター以外は全部真っ暗で、ロビーに他の客は誰もいない。
結局行けなかったゴアのための旅費で座席をビジネスクラスにアップグレードしてもらった。

ラウンジにいた乗客は5人、「こんなに人がいなくてフライトがキャンセルにならないんだろうか」 と少し不安になった。
わたしがインドの服を着ていたから 「え?」 という顔をした人もいて、「そうそう、まずはこの服を着替えないと」 と思ってトイレに行った。

ふーっ、やっぱりTシャツは楽。

そこにいた人たちは恐らく全員がビジネスマンだろう。
お互いから離れた席で本を読んだりコンピュータで何かしていたりしている。
私はワインを飲みながら、ただぼーっと過ごした。
最初は永遠に続きそうに思えたインド滞在も、振り返るとあっという間だった。

搭乗が始まってゲートに行くと 「え、こんなにたくさん一体どこにいたの?」 と驚くほど人がいて、ビジネスクラスも半分は埋まっていた。
座席についてウェルカムドリンクを飲み、間もなくして機体がゲートから離れた。

なんだかんだで楽しかった、インドの毎日。
でも、もう来ることはない気がする。
さようなら、インド。

ついに飛行機が離陸して暫くのあいだ窓の外を眺めた。
「インドの夜は暗いんだなぁ」 と思った。

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