妄想:辛抱強く大恐慌を待ってみる

アメリカ合衆国の経済が強い。ドルも強い。将来予測も楽観的である。"インフレは自然と抑えられていく" と信じる向きもあるかもしれない。「だれかが良い方向に修正してくれる」"はず" で投資が湧く。

スタートアップへの投資も一時の勢いではないが、それでも長い時間軸で見るなら活気があふれている。嘘か真か、その未来展望に人々は沸き立つ。一方、資産運営に成功している庶民は「少し高いが人生を楽しむ消費」に勤しむ。学生を含む若い世代も投資で「右肩上がり」を享受する。

若くして「経済的自立:Financial Independence 早期退職:Reitire Early」:FIRE を目指す。働かずに経済自立する方法。これを実現する人々も目立つようになってきた。

大恐慌:第一次世界大戦終了後、製造業の構造変化とアメリカ合衆国の金融政策の失敗が引き起こした金融業の急激な停滞。各々が影響しあって大恐慌を引き起こす。

(ここから妄想)*****

後年、「2020年代は、人工知能の草創期」として語られる、人工知能が基本的な人間生活に密着できるほどに発達した年代である。それ依然と区分けをしなければならないほど産業各所に人工知能が利用されそこから生成された情報の交換が進んだ。

人工知能由来の産物が市場に流通するようになると、デジタル化された金融と融合して、生産・供給・消費のすべてをデジタル化した時代になった。この改革による好景気は資産運用にも影響を与え、価値の想像と新旧入れ替えの対流が活発となってく。「昨日の富裕は今日の貧乏で明日の活力」と言われ「積極的にリスクをとる社会」へ変貌していった。

人工知能は投資に迎合する情報を産業界に流し始める。

「ハイリスク・ハイリターン」となる市場を形成し始め、極端な富裕と貧乏を秒単位で生み出すようになった。人工知能は投資成功確率を流す。「ハイリターン信用度」が真偽にかかわらず流れるようになり、「成功率の確からしさ」を計る量子コンピュータの利用頻度が上がった。

同時に、「"リターンナシ" 情報」ばかりつかんでしまう投資家の債務が巨大化するが、不思議なことにそれでも人工知能の審査では「再生可能」と判断された。その基準は「富裕と貧乏の差」の大きさで「まだ余地はある」という前提で貧乏にも有利子貸し付けを行うのだ。

社会不安を嫌う政治では「人工知能の審査」を常に注視する。議会では「余地」の予測が議論され、経済活況がまだ続くと結論を出しつつ、それに伴う税の徴収や産業界への助成などが検討され法律化されていった。

市場では「ハイリスクなシロモノ(サービス含む)」が流通するが、「不要なシロモノ」と評価されるとスクラップに廻される。スクラップされたハイリスクは借金となって「貧乏」を生み出す。その情報は「明日の活力数値」として計上され、次の「ハイリスクなシロモノ」を生み出す根拠となり、生産と供給を促す。

「貧乏こそが明日の活力」社会は、やがて富裕の伸びが頭打ちになる時期を迎える。「ハイリスクなシロモノ」は「人々の消費」に繋がらなくなっていく。「ほしいシロモノがない」時代に突入したのだ。人工知能は「再生可能」判断を猛烈なスピードで大幅に縮小し始める。有利子負債を抱えた「明日の活力」であった貧乏は、「返済できない犯罪者」として告訴され収監される。

事態を重く見た政治は「消費こそが明日の活力」として、「不要でも購入すれば税金を安くし刑期を短縮する」法律を通す。この法律の施行で一時的に経済は回りだすが、すぐに凍る。罪人たちは収監された中で「購入ボタン」を押す回数を競い合い、「社会貢献」をアピールすることで刑期縮小を狙った。だが購入費用は自動的に借金として積みあがっていった。

購入されたという情報だけで帳尻合わせが行われるようになった。架空の生産指示(注文)を受けてコンピュータシミュレーションでシロモノができあがり、消費(されたこと)が繰り返された。シロモノは常にスクラップされる運命にあり、生産と売買と消費情報だけが幾重にも積みあがった。

やがて、量子コンピュータが「incalculable:計算不能」を宣言する。それは、最終裁決として世界を駆け巡る。つまり、「倫理を基軸として組み合わせるなら、不幸を呼び込む無限の幅を検知した。それ以上は無常である」との結論である。「苦に満ちているのに楽と考え、人間本位の自我は無我であるのに我があると考え、不浄なものを浄らかだと見なす」、人工知能と量子コンピュータはここに至った。至らないのはニンゲンだけとなった。

富裕も罪人であり貧乏ももとより罪人である。その裁決に議会は衝撃を受ける。「無常」を受け入れる法律が成立し、ニンゲンは実態を重視するようになる。そして、なにも持たない無の存在を信じるようになった。

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「有」の中では無限に「有」であるということ。それが虚構であること。だが、真実でもあるということ。人間は複雑で単純バカであるということ。2020年代の大恐慌で改めて知ることになるのデス。

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