2006_1108世界一周part10249

日本とナチスは違うんだ!(世界一周の旅~シンガポール④)

日本人はシンガポール系華僑に本当に嫌われているかもしれない。そう思ったのはCanning Fort ParkのBattle Box博物館に行ったときだ。

シンガポール滞在中、まともに観光した場所はこの博物館のみといっても過言ではない。シンガポール滞在中は基本的に料金がかかるものには行かない、無料のものだけ行くということを続けていたが、結果まともに見れたのは観光スポットはマーライオンとセント―サ島のビーチだけであった。しかし、明治維新、第二次世界大戦後の日本の急成長に興味がある自分にとって、戦時中の展示を扱っているこの博物館だけは押さえておかねばならないと思った。

セントーサ島のビーチ

博物館は地下の元々防空壕の設備を使っており、薄暗い地下のトンネルをガイドと共に歩いていく。ガイドは典型的なシングリッシュを話すシンガポール華僑であったが、その話の殆どが第二次世界大戦時の日本人の蛮行についてであった。

日本がシンガポールへ侵攻した際、日本人は14,000~15,000人もの華僑を殺害したとか、1942年に在シンガポールのイギリス軍が降伏した後も日本は蛮行の限りを尽くしたとかいう話ばかりで、日本人としてはとても居心地が悪かった。その中で最も気になったのは、日本軍が行ったことを表現する際に、しきりに「like Nazi」と言っていたことだ。この言葉はものすごく耳障りであった。

日本とドイツが第二次世界大戦中に行ったことは、ユダヤ人虐殺を除けばあまり違いはないかもしれない(個人的には、その点でも違いがあるとは思っている)。しかし、一つの民族を抹殺するという民族浄化を行ったナチスは人道的に全く酌量の余地はなく、それは戦争犯罪の中でも最も許しがたいものである。一方日本は、言い方を変えれば19世紀後半から20世紀前半まで欧米列強が行ってきた様な植民地化を推し進めたのであり(尤も、植民地化といっても当時欧米列強が支配していた地域から欧米諸国を追い出したケースも多かった)、この表現の域を出る様な行為はほとんどなかったのではないかと思う。勿論、当時の日本軍が行った戦争犯罪とされる蛮行自体を擁護するつもりは全くないのだが、「時代が違うだけで何故日本だけ糾弾されねばならないのか」、「欧米諸国の過去の所業は何故不問に付されるのか」等の不満はある。

先に訪問したインドネシアでは、ある日本の学者の聞き取り調査によれば、インドネシアは長年のオランダの植民地支配に苦しんでいたが、日本がオランダを追い出してことで喜んだインドネシア人は多かったそうだ。また、日本は民族自決の原則に則りインドネシア軍を整備し、独立へ着実に足場を固めていったとのことである。しかし、1945年に日本軍が降伏し、インドネシアが独立を宣言すると、な・ぜ・か、旧宗主国のイギリスとオランダがインドネシアの再植民地化を目指し攻めてくるという事態に陥る。この状況下、インドネシアに残った日本兵2,000人は、インドネシア独立の為インドネシア兵と一緒に戦ったそうである(主に前線で活躍した日本人の戦死率は高く、50%にも上ったとのこと)。その結果、インドネシアは1948年に再度イギリス・オランダを追い出すことに成功した。

このような、反対派の人からすれば「極右思想」、「軍国主義礼賛」とも思われかねない話は人前ではしない。聞き手が「日本軍が行ってきたことは全て悪い」というマインドであれば、自分のことを無条件に「敵」、もしくは「変わった人」とみなし、その他の話題にも支障が出てくるケースが多い為である。しかし個人的には、日本人は「勝者の歴史」を批判的に見ることで、日本が行ったことの具体的に何が反省すべきか点かを見つめなおすべきである。「全部私が悪かったです。だからもう戦争しません。アメリカさんに助けてもらいます」じゃうまくいかないということをもっと現実的に考えた方が良い。

誰もが平和を望む。自分も勿論そう。ただ、世界には北朝鮮等の危険国家やテロリストが跋扈しており、一寸先でも何がおこるかわからない。そのような予測不可能な世の中をどのような安全保障体制で乗り切っていくか。平和を実現する為にも今後はもっと建設的な議論を行っていきたい。その為にも、今後はこのような意見も、もっとマイルドな形ではあるが徐々に主張していきたいと思う。

また、そもそも「日本とナチス」という比較に違和感を覚える。ドイツでは、ナチスの戦争犯罪と一般のドイツ人は関係ないという見方が一般的とのことであるが(そして、そのこと自体を否定するつもりはないが)、ナチスも日本の東条英機内閣も、民衆の支持を得て政権をとったという意味では何も変わらない。その意味で言えば、日本とナチスを比較するのは、印象の悪いナチスを使って日本を貶めようとするようなイメージがあり、あくまで比べるのは日本とドイツにしてくれと言いたかった。

シンガポール編もこれが最後であるが、全体的な印象として、バックパッカが長期滞在する国ではないなと感じた。食事はおいしいし宿もそこまで高くはないが、シンガポールの魅力はショッピング等のお金があるからこそ楽しめる娯楽であり、お金がない人にはつらい。それでも、この人種のるつぼとも言える多様性を持った国を歩き回ったこと、そこで感じたことは一生の宝物になるだろう。


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