2006_1108世界一周part10279

経済格差(世界一周の旅~マレーシア①)

シンガポールとマレーシア、この経済格差には誰もが納得するだろう。シンガポールからバスでマレーシアのジョホールバルに向かうが、まさにそこは異世界であった。再びインドネシアの様な雑踏が広がる。こんなに近いのに橋を隔てただけでここまで変わるのか。

特に見どころもなかった上にひどいスコールが降ってきたので、早速クアラルンプール(KL)行きの電車に乗る。列車は二等車であったが比較的綺麗で、インドネシアの一等車よりも良かったが、車内は冷房が効きすぎておりTシャツ一枚では寒すぎた。同じく隣で凍えていたのはアメリカ人で、タイで英語を教えているとのこと。お互いの旅行の話になり、自分がKLからバンコクが遠いのでハートヤイというタイ南部の都市で一泊しようと考えていると話したところ、危険だからやめた方がよいといわれた。後で調べてみると、確かにタイ南部では独立を求めるイスラム系組織のテロが頻発しており、今でも外務省の渡航危険情報が出されている。ほほ笑みの国だからそんな話とは無縁だろうと無意識に思っていたが、話を聞いておいて本当に良かった。よくよく考えれば、軍事クーデターが頻発している国を安全と捉える方がおかしい。

車窓風景(ひたすらジャングル)

KLに到着すると、その駅のあまりの大きさにびっくりする。ジャカルタの駅とは比べ物にならない。2006年当時で以下の様な状況であったので、今は更に開発が進んでいるだろう。

しかもKLではモノレールも走っており、乗り方も簡単で値段もリーゾナブルでKL滞在中は頻繁に利用した。そして極めつけはこのペトロナスタワー。タワーの中はオフィスやショッピングモールとなっており、この塔の下にいるとここが途上国であることを忘れてしまいそうだ(いや、マレーシアを途上国と呼ぶのは失礼かもしれない)。

このようにインドネシアとマレーシアの違いを感じると、何故ここまで差が出てしまったのかと思う。2か国とも1980年以前には一人当たりGDPは2,000ドルにも達しておらず(インドネシアは約600ドル、マレーシアは2,000ドル弱)、どんぐりの背比べの様な状況であったが、2013年にはマレーシアは約3,500ドル、マレーシアは10,000ドル強と差は大きく開いてしまっている。

一つの理由は、外資の投資のしやすさだと思う。例えばマレーシアでは、外資のShellやExxonを見かけることもあったが、一方でPetronasという巨大な国営石油会社もあり、外資を国の成長に生かしつつも自国の権益を守るために自前の国営会社を作りうまくバランスをとろうとしている。インドネシアではそもそも外資をあまり見かけることがなかった。これは、アジア通貨危機を契機とした労働者運動の高まりが一つの原因なのだろう。外資を規制し労働者保護の政策をとらざるをえななかったインドネシアは外資を使った成長を活用することができなかった一方、マレーシアは通貨危機をIMFの介入なくなんとか自力で乗り越え、引き続き外資を生かした成長を続けることができた。

ただ一番の疑問は、何故そのような政策の差異があったのかということだ。マレーシアにはマハティールがいた。インドネシアにはスハルトがいた。また、シンガポールにはリークアンユーがいた。この3人の(事実上の)独裁者達にどんな違いがあったのか。彼らのリーダーシップの違いだけでこの3か国の経済格差を説明できるのだろうか。そうでなければ、何がこの経済格差を説明できるのだろうか。他国を旅すると、そのような経済成長に大きな影響を与える要因に対する好奇心が大いに沸く。過去二度世界が目を見張るような経済成長を成し遂げた日本に生まれた身としては、「国民性」という曖昧な言葉だが個人的には重要だと思っている要因を信じたい。そして、今の日本にはその当時の「国民性」から何が欠落してしまったかを考えたい。

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