なぜ「フェミニスト議連」は立ち上がったのか?その根底に窺えるのは「高市氏(あるいは野田氏)への淡い期待」
したがって、これまではフェミニストによる表現への批判も、内容はさておき、当然の権利であると言えたわけです。
ところが今回、全国フェミニスト「議員」連盟という、権力性がゼロとは言い難い団体名で、表現を批判しました。
抗議した先も警察という公権力なので、警察の表現の自由を侵害した、ということにはなりません。
しかし公開質問上の書面を読むと、警察だけでなく、表現そのものについても、かなり強烈に批判しています。
議員がその肩書を用いて表現を批判したことは、作成者の表現の自由の領域に足を踏み入れたとみることはできるでしょう。
フェミニストらによる表現規制の運動が、ただならぬ方向へ向かっているようです。
そもそもこの「フェミニスト議連」というもの自体、よくわからない団体です。どんな政党所属議員で構成されているのかも全く情報がない。自民なのか、立憲共産なのかもわからない。
──と思ったらこれ、地方議員の議連なんですね。しかも代表は「生活者ネットワーク」という東京都の地域政党の人。松戸市でクレームを入れた議員も無所属のようです。この議連が地方議員の、しかも地方政党所属者で構成されている(らしい)ことは意外に重要なポイントです。
地方政治は意外に国政の党利党略の影響を受けない
日本の国政では、現状注目されているフェミニズム政策はほぼ「選択的夫婦別姓」のみであり、これに反対している自民党は(現実的な対案を出してきているにもかかわらず)反フェミ、すぐにでも実行しようとしている立憲や共産はフェミニズム政党だと、「レッテル貼り」の様相を呈していますが、これは必ずしも正しいとは言えませんし、党利党略が絡んでいることは我々も留意しなければなりません。
しかし、地方の政治ではこうした国政の党利党略と無関係であることも多いです。大阪維新の会然り都民ファーストの会然り、地域政党に期待が高まってしまうと、国政政党は右派から左派まで相乗りになって選挙戦を戦わざるを得なくなるということはしばしばあります。
沖縄もわかりやすい例の一つでしょう。2009年衆院選の時、のちに政権を取ることとなる民主・社民・国民新の勢力は「自民のように米軍基地を辺野古には移設させない。最低でも県外に移す」と言って県民の大きな支持を集めましたが、結局その政権のうちに辺野古に代わる有効な案を提示することができず、右派政党にも左派政党にも頼れなくなった移設阻止を求める声は「オール沖縄」に集うことになります。
小山晃弘氏は「反フェミニズムには右派から左派までいろいろいる」という論旨の記事を書いていますが、フェミニズムだって同じです。元来右派とか左派とかで語れるものではありません。いわんや「お気持ち」をや。一部論客はこんな記事も書いています。
フェミニスト議連も、右派・左派の視座を超えた連帯かと思われます。そんな地方政治家の集団が、今になって表現規制に動き出したということ。私はこれを、自民党総裁選における高市早苗氏および野田聖子氏の浮上と無関係ではないと思っています。たとえイデオロギー的に相容れないとしても、彼女らには「淡い期待」があるのではないでしょうか。
「敵ながら天晴れだ」
私は某所で、これを裏付けるような話を耳にしました。ネット配信された高市早苗氏の出馬会見に対して、フェミニストのアカウントが「敵ながら天晴れだ」とコメントしたらしいのです。「この女をイデオロギー的には支持できないが、それでもあたしたちが望むことをもしかしたらやってくれそうだ。特にオタク・ロリコン的表現の法規制に積極的なのは好感が持てる」ということでしょうか。
また、これも信憑性に難のある風の噂ではあるのですが、某県議会議員に、非常に厳しい漫画アニメゲーム規制を野望として持っている女性議員がいて、彼女は香川県のゲーム規制条例に賛同する立場でパブコメを送り、同様の条例をその県議会でも提出した、また憲法改正の機運が高まったら性的表現の禁止を盛り込ませるために国政に鞍替えを検討している、などとも言われています。現状は無所属のようですが、憲法改正の野望を持っていることを考えると、国政では自民党や維新の会から出てくることでしょう。
「フェミニストなら高市早苗を支持すべき」と言うけれど
国政のフェミニスト政治家やリベラル政治家に表現規制を危惧する声が多いのは、表現規制反対派の熱心なロビーもさることながら、彼ら彼女ら自身が「その表現規制が保守派に都合のいいように運用される」ことを心配しているのも大きな理由としてあります。しかし、我々は今、むしろ逆のことを心配しなければなりません。すなわち「保守的な性規範がフェミニズムに都合のいいように運用される」ことを。
アンチフェミ勢力の一部に「フェミニストなら高市早苗を支持すべき」という主張が出てきていると聞きますが、フェミニストが高市早苗を支持するっていうのは、そういうことなんですよ。
【9/18追記】やっぱりそうだったよ…
偶然発見しましたが、これは2015年にフェミニスト議連が出した声明の一つです。当時の安倍首相の次に総務大臣時代の高市早苗氏が宛名になっています。つまりこの議連は、イデオロギー的な闘争として“フェミニズム”をやっているわけでは全くなく、保守派とわかっていても一応は対話を求めているわけです。彼女が首相になろうというのなら、議連はいずくんぞ期待を抱かざることあらんや、ということですね。
あとこの声明をもって「議連は高市早苗を快く思っていない」と主張している人も見かけましたが、この声明はあくまでも「保守政党まで含め、候補者の男女同数擁立を求める」ものですからね。それが何をもたらすかについては前回の記事の『保守政党のクオータを埋めるのは誰か?』を参照してください。