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2022年スタートアップ採用市況振り返り

カタールワールドカップ、盛り上がりましたね。
高度なチーム戦術がベースにありながらも最後に試合を決めるのはアルゼンチンのメッシ、フランスのエムバペ、など強烈な『個』だった気がします。
翻って、突き抜けた成長をするスタートアップには強い『個』である起業家、経営メンバーがいる気がしています。

さて、2022年のスタートアップ採用市況を振り返りたいと思います。

①2022年夏以降、スタートアップは採用を絞った
②副業・リモートワークで企業成長に差がついた
③タレント人材・即戦力人材採用の激化
④2022年の積極採用業界

それぞれの考えを書いていきます。

①2022年夏以降、スタートアップは採用を絞りはじめた。

2022年夏くらいからスタートアップの採用ペースに翳りが見え始めました。
上場している他の人材会社IRなどを見ても軒並み転職決定者数は前年比大幅ダウンをしており、スタートアップ転職者は減少ペースに転じたといえるでしょう。

その理由としては、主に以下があると考えています。
・国内投資環境の暗雲化
・レーターステージ企業、SaaS企業への期待値調整

国内投資環境については千葉道場ファンド石井貴基さんのnote のイラストがよくまとまっていたので引用させていただきます。

引用:https://note.com/takaki_ishii/n/n4ae8a1fef53a

この資料の通りだとアマテラスも感じています。
2022年半ばくらいから国内スタートアップ投資は減少に転じ、資金調達を見込んで積極採用していたスタートアップの採用が慎重になりました。

レーターステージの採用が急ブレーキ。

また2022年後半にかけてダウンラウンドIPOが起こっています。この影響をもっとも受けるのがレーターステージ企業です。想定していた株価での調達、IPOを見込めない可能性が高まり、採用が急ブレーキ、もしくは慎重姿勢に転じました。

ミドルステージの採用も慎重に。

また、シリーズA前後のミドルステージ企業のダウンラウンド調達も散見されるようになりました。
ここ数年、特にSaaSスタートアップに対しては大きな成長期待をされていたこともありましたが業績結果が明らかになり厳しい見方をされるようになりました。大きな成長予測を掲げることが難しくなったミドルステージ企業も、全般的に採用は慎重になってきています。
昨年2021年の夏秋頃はアマテラスとの初回打合せで契約即決するミドルステージ企業がとても多かったのですが、最近は、「株主に相談してから連絡します。」という話が増えていることからも慎重さを実感します。

一方で、この環境下でも着実に売上を積み上げ、期待度も高まっているスタートアップも存在していますのでスタートアップ全体が逆境ということではありません。

②副業・リモートワークによって企業成長に差が出た。

副業・リモートワークが普及したことは説明を待ちませんが、これによって生産性に差が出て、企業成長に影響している原因に言及したいと思います。

実はアマテラスサイト内では副業・業務委託の決定がここ2年で約10倍になりました。
(アマテラスは正社員だけでなく副業・業務委託も採用できるサイトです!(宣伝))

資金調達環境が不透明になりスタートアップの採用が慎重になればなるほど確かなスキルを持ち即戦力の副業・業務委託人材への需要が高まります。特にマーケ、エンジニア、広報PR、HRなどの専門性の高い職種はリモートワークでも成果を出しやすく、スタートアップ界隈で成果を重ねるプロ人材が増えてきました。

Slack、Gather、oVice、Notionなどを活用したワークスタイルが整い、リモートワーク・副業を前提としたマネジメントをスタートアップ側が習熟した1年とも言えるでしょう。

一方で、リモートワークを取り入れて生産性が下がったという相談を経営者から受けることも増えました。
そのような企業の特徴としては、
・元々横の関係が薄い
・マネジメント層が性悪説な考え方でマイクロマネジメントする
・ヒエラルキーが強く心理的安全性が低い組織

という点があります。

そのような企業がリモートで生産性を上げるためにアマテラスがアドバイスしていることは以下です。

・MVVC(ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー)に共感し、コミットできる人を採用すること。
・ビジョンやミッションを言語化して明確にして、社員がそれを自分事として話せるようにする。
・権限移譲し自律的に動き、全員がCXOのようなカルチャーを作ること。
・裁量を与えて成果で測る評価システム

リモートワーク・副業に対応するということは、スラックなどのツールを導入することが本質的ではなく、自律的に動ける社員による経営体制に移行することだと思います。
スタートアップに限らず以前から自律的な社員の育成は謳われてきましたが、この点でもコロナは経営シフトを促していると言えるでしょう。

③タレント人材・即戦力人材採用の激化

2022年の採用環境で顕在化したこととして
・スタートアップで成果を出せる人材には必ず複数企業から声がかかっている。
・市場に出ていない転職潜在層に声をかける「攻めの採用」が一般化。
・成果を出せるプロ人材であれば働く場所、住む場所は関係なくなった。

②で述べたように副業・リモートワークが普及したことで、スキルがあり成果を出せる人材は次々と成長企業から声がかかり、実績をハイペースで積み上げ、市場価値を高騰させている状況です。実際に私もこの人優秀だなぁと思う人に聞くと、ほぼ全員が複数のスタートアップから声がかかっていて順番待ちになっている状況です。そのような人はプロジェクトを選べる立場ですので報酬も上がっています。

そういったプロ人材は転職市場を知るために転職サイトに登録はしますが仕事を探すための活動はしません。つまり優秀人材ほど市場に出なくなっています。

極端な事例ですがシェリル・サンドバーグ(のようなタレント人材)はLinkedInで採用できません。タレントはCEO自らが自分のネットワークでアプローチして口説かなければなりません。人材エージェントにお願いして推薦を待っているだけの「待ちの採用」をしているスタートアップは人材獲得競争から取り残されている、という現実を知る必要があります。また、人材エージェントから推薦される人材はキャリアの主体性が低くスタートアップが求めるマインドとはズレが顕著になりつつあると感じています。

短期的な成果が求められるスタートアップ側も育成が必要な未経験正社員よりも確かな成果を出してきた副業・業務委託人材の採用のほうがリスクが低いという考えをしています。まずは副業・業務委託人材に参画してもらい、その後双方納得すれば正社員転換の交渉を始める、というパターンがアマテラス上でもかなり増えました。ミスマッチを防ぐ意味でもそちらのほうが合理的ですので、副業・業務委託⇒正社員転換の流れは今後ますます増えるでしょう。

ハイポテンシャル人材よりも即戦力人材のニーズが高まっている、という点でいえば、「ポストコンサル人材」が人気な点は変わらないのですが、「スタートアップ経験者」の転職市場での人気は今後ますます上昇しそうです。

④2022年、積極的に採用した業界は?

1.AI、ブロックチェーン、量子、XR
2.HRテック、Edテック
3.IoT
4.SaaS、ウェブサービス
5.B2C
6.サステナビリティ、環境
7.モビリティ、ロボティクス
8.建設テック、不動産テック
9.バイオ・新素材
10.フィンテック
11.インバウンド

アマテラスサイトにおける2022年の積極採用業界のランキングです。
業界ごとの1社あたりのスカウト数の順位です。
(算出期間 2022年1月~2022年12月11日まで)

この数字はあくまでアマテラス利用企業(アーリーステージかつディープテックが多い)の数字で、スタートアップ全体の数字とは言えない点はご理解ください。

次代を担うであろうAI、量子、XRといったディープテック系スタートアップの採用姿勢はアクティブでした。投資環境の停滞などもありますが、次世代を担う技術であることを固く信じるこのカテゴリのスタートアップが採用の手を緩める気配はありません。23年もアクティブに採用を続けるでしょう。

SaaS業界は2022年前半まではアクティブにスカウトを打ってきましたが、後半になり失速した印象です。この流れは2023年にも続きそうです。

6位のサステナビリティ環境、9位のバイオ・新素材は順位こそ中低位ですが採用はアクティブです。企業からスカウトせずとも自己応募が多いためこの順位となっています。地球規模での人類課題を解決する企業への注目は増えており、2023年はより注目される業界になるでしょう。

最下位のインバウンド業界はコロナの影響をもろに受けたと言わざるを得ません。来年は大きく復活してほしいと願っています。

ということで、2022年のスタートアップ採用市況についてまとめてみました。

2023年1月には「2023年のスタートアップ採用の展望」と題してお送りする予定です。ご期待ください。

最後に、2022年はスタートアップを取り巻くファイナンス環境は決してポジティブとはいえない状況でしたが、苦難・逆境は企業を磨きます。    艱難汝を玉にす。
2023年もスタートアップ採用に貢献できるよう弊社並びに弊社サービスを高めていきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

以上


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